全国的では、過去最多のペースに上るクマによる被害。福井県内でも29日だけで、勝山市、大野市や福井市など各地で続々と目撃情報が寄せられています。どう警戒すべきか、今年の特徴や傾向について専門家に聞きました。
県によりますと、今年4月からの福井県内のクマ出没件数は549件。(10月26日現在)例年に比べて特別に多くはないものの、10月に入り奥越で急増しています。
県自然環境課の西垣正男さんは「去年と同じ時期と比べて、奥越は2倍くらいの出没件数」と話します。
今年は、クマの餌となる山でのドングリの生育が悪く、エサを求めてマが人里へ下りてきていると話します。
西垣さんは、クマが人里近く、集落に近接する山に住むようになっているとしたうえで「県内どこにでもクマがいる状況」だと分析。その原因は、平野部と山間部の間、中山間地の人口が減り、人の手が入らなくなっているためです。
カキやクリの実が収穫されずにクマの餌となり、田畑は荒れて藪と化し、クマの隠れる場所が増えているのです。
「山の奥にいたクマが、人の暮らしに近いところに生息域を拡大している。これからも市街地への出没は増えることを前提に対策が必要」(西垣さん)
全国的に、市街地での目撃や人が襲われる被害が増えています。
岩手県では10月に、温泉旅館の従業員がクマに襲われ死亡。秋田県でも10月に入り1人が死亡、35人がけがをするなど、全国でクマによる人身被害が過去最多となっています。
クマは凶暴化しているのでしょうか。
クマの生態に詳しい石川県立大学の大井徹教授は、ある変化を指摘します。
「クマが凶暴化していることはない。行動が変化している。ほとんどの事故は出会い頭や市街地に出没したクマがパニックに陥って生じた事故で、人慣れした個体が増えて被害が発生しやすくなっている」(大井教授)
ここ数年、人里に定着し人慣れしたクマが増加しているのです。
福井県内でもクマが人を襲う可能性はあるのかについて大井教授は「東北で起きているクマの分布拡大は、福井でも起きている。東北で起きている事が北陸でも起きる可能性はある」とします。
人が住む市街地に出てきたクマを駆除するため、9月に導入された緊急銃猟。
南越前町では28日に訓練が実施され、ハンターからは様々な声が上がりました。
「実際には起きてほしくない」
「実際、至近距離でクマの対応をするのは怖い。捕獲する者も危険が大きくなると思うので、いろいろ考えていかなければ」
「危険な動物だから…いい法律ができた。民家や学校など施設が多いところでは慎重に判断して進めなければ事故になる」
29日には勝山市で県内初の緊急銃猟が行われ、こども園近くの藪に潜んでいた親子クマ2頭が駆除されました。
導入間もない緊急銃猟は、いま手探りの状況が続いています。
大井教授は、被害を防ぐには長期的な施策が欠かせないとします。「行政、市民一体となって、クマと人間のすみわけとなる対策を進める必要がある」
県ではウェブサイトでクマの出没情報を提供しています。山に出かけるときには、どこにでもクマがいるという意識をもって鈴を携帯するなどの対応を取りましょう。