2024年に初めて静岡を抜いて日本一のお茶生産量となった鹿児島県で、現在収穫される秋冬番茶の価格が例年の5倍から7倍に高騰する異常事態が起きている。茶業関係者によると、世界的な抹茶ブームが背景にあるという。
市場で広がる危機感
「もうめちゃくちゃ。苦しいですよね、皆さんね」
2025年10月23日朝、鹿児島県内の茶市場で秋冬番茶の入札作業が行われた。取引に訪れた問屋の一人は、35年の業界経験の中でこれほどの価格高騰を見たことがないと頭を抱える。
「こんなに高くなることあった?」という質問に対し、「ない、全くない。値上げは皆さんそれぞれやっていると思う。来年これが続くと消費者が離れ、小売業が離れる」と危機感を示した。
5倍から7倍の異常な価格上昇
秋冬番茶は10月に摘み取られるお茶で、例年は1キロあたり平均300円から400円台で取引されてきた。しかし2025年はその5倍から7倍近くの値段がつけられている。23日の取引価格は2800円を超える水準となった。
「これがいつもの秋より高いもんね」と市場関係者からも驚きの声が上がっている。

世界的抹茶ブームが原因か
この異常な価格高騰の背景について、鹿児島県茶業会議所の光村徹専務理事は世界的な抹茶ブームを挙げる。
「世界的な抹茶ブームによって茶葉が抹茶の原料であるてん茶の製造にまわっているから、緑茶の原料の煎茶の供給量が減ってしまって価格が上がっている」と分析する。
さらに「抹茶ブームにより、ドリンク用の原材料がこの先減るのではないかという予想もあるのでは」と今後の見通しについても言及した。
先行きは不透明
2025年以降のお茶価格の見通しについて光村専務理事は「抹茶ブームは簡単に消えないと思うが、それが5年、10年、20年続くのかどうか。どうなるのか次第」と述べた。
また「現在はそこまでなっていないが、秋以降は価格が厳しくなってくるのではという声も」あると付け加え、状況を注視する必要性を示唆した。
鹿児島県は2024年、静岡県を抜いて初めて日本一のお茶生産県となったばかり。この価格高騰が県内茶業にどのような影響を与えるか、今後の展開が注目される。
(動画で見る:「秋冬番茶の価格高騰 2024年の5~7倍の取引価格 背景に世界的な抹茶ブームか」)
