今から40年前、男性が刺殺された『松橋事件』をめぐり、再審無罪となった男性の遺族が国と熊本県に損害賠償を求めた裁判の控訴審が、10月20日から福岡高裁で始まった。原告側が「冤罪を生じさせてしまったことへの反省はない」などと意見を述べた一方、被告側は訴えの棄却を求めた。
熊本地裁は国の違法性認めるも県は認めず
松橋事件国家賠償請求訴訟弁護団の齊藤誠共同代表は「警察が冤罪を起こしたことに対して、何ら反省しようとしていない。そういう体質がまた冤罪を引き起こす。なんとしてでも控訴審では県・県警に対し勝訴を目指して頑張りたい」と、控訴審の前に述べた。

1985年に現在の熊本・宇城市松橋町で男性が刃物で殺害された『松橋事件』をめぐっては、殺人の罪などで服役した宮田浩喜さんが再審・裁判のやり直しを請求。熊本地裁が2016年に再審開始を認め、2019年に再審無罪となった。

宮田さんは捜査の違法性などを明らかにするため、国と熊本県に対し、慰謝料など約8500万円の損害賠償を求めて提訴。宮田さんが亡くなってからは、遺族が裁判を引き継いでいた。

そして、2025年3月に熊本地裁は「検察が、再審無罪の決め手となった証拠を裁判で明らかにしなかったのは違法」と指摘。約2380万円を国に支払うよう命じた。

その一方で、熊本県警の取り調べについては「違法ではない」と結論づけ、熊本県への請求は退けた。
原告側「反省なく自浄能力もない」
その後、国と宮田さんの遺族側がそれぞれ控訴。福岡高裁で10月20日に控訴審の初弁論が開かれた。

この中で、原告弁護団の村山雅則弁護士が被告の国と熊本県に対し、「冤罪を生じさせてしまったことへの反省はなく、自浄能力もないと言わざるを得ない」と意見を述べた。

一方、被告の国は「証拠は核心部分に係る自白の信用性に影響を及ぼすものではないと考えていた」などと主張。また熊本県も、「地裁判決には何ら誤りがない」として、いずれも訴えの棄却を求めた。

裁判終了後、会見を開いた原告の弁護団の村山雅則事務局長は「どこかで間違っていたから、冤罪が発生してしまったわけで、その間違いの責任をきちんととってもらう。これは昭和60年の事件ではあるが、きちんと国賠法上違法という判断をしてもらい、今後の冤罪防止につなげたい」と述べた。
(テレビ熊本)
