2025年3月から5月にかけて鳥取市と島根・安来市で相次いで人身事故を起こした上、その後も無免許運転を繰り返すなど、過失運転致傷や道路交通法違反など4つの罪に問われている74歳の男に対する初公判が、10月23日に鳥取地裁で開かれた。
被告の男は、起訴内容を認めた上で被害者家族に謝罪の言葉を述べた。
一方で「借金の返済もあり、お金がなく謝るしか方法がない」などと述べ、被害者への賠償がままならない現状が明らかになった。
過失運転致傷などの罪に問われているのは、鳥取・伯耆町の無職・野口 誠被告(74)だ。
10月23日に鳥取地裁で初公判が開かれ、公判後に姿を見せた野口被告は、うつむき加減に目を伏せながら歩いていた。
短期間で重ねた事故と法令違反
起訴状などによると、野口被告は2025年3月31日に鳥取市内の県道で、横断歩道を渡っていた当時9歳の男子児童を車ではねる事故を起こした。
児童は、入院加療3か月以上を要する傷害を負い、これによって常に介護が必要な後遺症が残ったとしている。
さらに被告は、事故から3日後の4月3日に釈放された後、公共交通機関を使って自宅に戻ると、車検が切れ自賠責保険に未加入の車を運転。別の車のナンバープレートを付けたその車で、押収された車に残されていた書類を取りに鳥取警察署に行ったという。

用事を済ませた後、事故を起こしたことを被告の子に謝罪するために鳥取市からさらに車を運転し島根に行った際に、安来市内の市道で自転車に乗っていた高校生をはねる事故を起こした。
この際、被告は救護措置を取らずその場から立ち去ったが、その後逮捕・拘留。
4月21日に釈放された。
これらの事故で免許取り消し処分を受けたにもかかわらず、5月には無免許で軽トラックを運転したという。
野口被告は、過失運転致傷、道路運送車両法違反、自動車損害賠償保障法違反、道路交通法違反のあわせて4つの罪に問われている。
被害児童に重い後遺症を負わせた事故 釈放後にひき逃げ事件
検察は冒頭陳述で、鳥取市での事故の被害者について「左半身の麻痺や発語ができなくなるなど、常に介護が必要な後遺症が残った」と指摘。
その重大な事故を起こした後も、ひき逃げや無免許運転を繰り返した被告の認識の甘さを厳しく指摘した。
検察側からの「鳥取市での事故について被害者の存在にいつ気がついたか」との質問に野口被告は、「ぶつかった後。大きな音がしてサイドミラーで人が倒れているのが見えたので、人をはねてしまったと気がついた」と述べた。
そして車検切れの車を運転した点については「事故をしなければいいだろうと思った」と答えた。
さらに安来市で自転車の高校生をはねて、ひき逃げした理由について質問されると「大きな事故を起こした直後で、車検切れの車を運転している事がバレたら大変な罪になると思った」と述べた。

改めて事故などについてどう思っているかとの質問に対しては、「しでかした。罪の重みを感じながら(自宅近くの坂道をフーフー言いながら歩いている。罪の重大さを感じていて、二度と運転することはない」と答えた。
法廷で被害者家族に謝罪も…賠償金の支払いがままならない現状
弁護側からの質問に対し野口被告は、事故の原因について「不注意だった。先にある信号機に気を取られていた。何度も通ったことがある道で、人が横断歩道を通るところをほとんど見たことがないので確認義務を怠った」と説明した。
また野口被告は経済状況について、金融機関への借金や、知人への借金、家のローンに加え、滞納している税金など、多額の債務を抱えていることを明らかにした。
このため被害者への賠償について、「年金生活で借金の返済もあるため、賠償することができていない。もし賠償金を払えるなら少しずつでも払いたいという気持ちはある」と述べた。

そして、被害者参加制度で法廷に出席した被害者の家族に対し、「お金がなく、謝るしか方法がない。心労とご苦労をおかけして申し訳ない」と謝罪の言葉を述べた。
次回の公判は、11月28日に開かれる予定だ。
(TSKさんいん中央テレビ)
