「制服じゃなくていいじゃん」。長野県松本市の中学校で10月20日から試験的に制服でも私服でも良い「自由服」での登校が始まった。生徒発案の取り組みで、職員や生徒会、PTAに意義を説明して実現。「自分らしさ」や「TPO」に応じた選択を自ら考えようという目的だ。
制服も私服もOK
松本市の丸ノ内中学校。午前8時、登校する生徒は制服姿もいれば、体操服も。そして、カーディガンやパーカなどの私服もいる。

ジーパンにカーディガンを羽織って登校する3年生は「きょうは私服で来ました。自分で選ぶ服装で新鮮な気持ちです」、制服姿の2年生は「校外に出る用事があるのでしっかりした制服で」、運動着を着た1年生は「動きやすいし涼しいので、学校生活には適しているのでは」と話した。
10月20日から「自由服登校プロジェクト」が始まった。
初日は制服が半数 私服が4分の1
これまでは「制服」のみだったが、10月20日から2週間は好きな服装で登校し、学校生活を送る。
提案・企画したのは3年生6人のグループ。

初日の10月20日は私服の割合をチェック。校外学習があったこともあり、約半数が「制服」で「私服」は4分の1程度だった。
企画した3年生は「自分の企画に参加してくれたのが実感できてうれしかった。みんなが考えてくれるんだな」と喜んだ。
「制服じゃなくていいじゃん」
「自由服」を提案したきっかけは「総合的な学習」でファッションをテーマに調査をしていた時のこと。
学校の「40年史」に「生徒会で決めた約束の上に立った自由服の着用は本校の伝統」と書かれているのを見つけた。
調べてみると、2000年以前のアルバムには、確かに自由な服装の生徒たちが―。

2002年ごろに「自由服」が廃止され、「制服」に移行したことも分かった。
企画した3年生は「え、おかしくない?って。制服じゃなくていいじゃん、って。私たちも私服で来たいっていう願望につながっていって」と話す。
その後、調査したが、自由服が廃止された経緯は確認できなかった。
ただ、「自由」を重んじる学校の伝統だった「自由服」を体験してみたいという思いを抱くようになり実現に向け動き出した。
「自由服登校の意義」議論重ね
職員、生徒会、PTAにプレゼンし、「自由服登校の意義」を説明。文化祭では全校生徒と話し合い、議論を重ねた。

企画した3年生は「考えるのが面倒だから制服が着たいと言っていた人もいたんですけど、そうじゃなくて考えて行動するのが今の時代」、「学校教育目標にもある『自治の精神』に基づいて、一人一人が意識してくれたらうれしいなと思って」と語った。
今回の「自由服」、細かい決まりはないが、「多様性を尊重すること」「TPOに応じた選択」などを呼びかけている。
「自ら考え、行動するきっかけに」
企画メンバーは全員「私服」で登校した。
ジーパンに白い長袖のついた黒いカットソーを着た生徒は「色を入れたくて、ピンクとか迷ったんですけど、本当、1~2時間くらい悩んで、それを選ぶのが楽しい時間だったなって」、黒いパーカーを着た生徒は「下は半袖着てきたんだけど、朝は寒かったので長袖着てきました。制服だと脱いだり着たりできないから、その分便利だなって」と話した。

「自ら考え、行動するきっかけになれば」と生徒が発案した「自由服登校」。
10月末まで実施し、11月、成果を発表する予定だ。