鹿児島市の小学校で「怒ってはいけないソフトボール大会」が開かれた。最大の特徴は、指導者が試合中に選手を怒ることが禁止されているという点で、グラウンドには明るく笑顔でプレーする子どもたちの姿があった。

鹿児島市の鴨池小学校で開催
鹿児島市の鴨池小学校で開催
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勝ち負けより楽しさ重視、子どもたちの笑顔があふれる特別な大会

鹿児島市の鴨池小学校で開かれた大会の名称は「だいもががっちゃならん大会」。「がる」とは鹿児島の方言で「怒る」を意味し、「がっちゃならん」は「怒ってはいけない」という意味。「誰もが怒ってはいけない」ソフトボール大会というわけだ。

10月12日だというのに猛暑日一歩手前の34℃という暑さの中、鹿児島市・鴨池小学校で開かれたこの大会には市内のソフトボールスポーツ少年団8チームが参加した。「勝ち負けでなく、選手が楽しくプレーできることを第一に考えよう」をコンセプトに初めて開かれた。

「怒ってはいけない」大会という意味です
「怒ってはいけない」大会という意味です

監視役が指導者の言動をチェック、違反者には「バツ印マスク」

大会では指導者の発言をチェックする監視役が配置された。選手を怒ってしまうと笛が鳴り、その指導者は「バツ印」のマスクを着けなければならない。

絶対に着けたくないマスク
絶対に着けたくないマスク

守備の選手がダッシュしてフライをキャッチ。するとベンチから「ナイスキャッチ!」の声。たとえ打球がファウルになっても「オッケーオッケー、いいスイング!」とコーチが声をかけていた。

指導者は選手がファインプレーをしたらほめるのはもちろん、ミスをしても選手を「がる」ことなく常に前向きな言葉をかけ続けた。

ベンチからは前向きな声がかけられた
ベンチからは前向きな声がかけられた

子どもたちの反応は?「ほめられた方が好き」

この特別なルールの大会、参加した児童はどう感じているのか。

父親がコーチを務めているという選手は「ほめられた方が好き。お父さんがいつも僕に厳しく言うので」と話した。「きょうはお父さん優しかった?」との記者の問いに「はい!いろんなうれしい言葉をかけてくれてうれしかった」と笑顔で答えてくれた。

ほかにも「いつもより『打つぞ!』っていう気が高まったり、守備でも切り替えることができた」と話す選手も。前向きな声かけがプレーによい影響を与えたようだ。

うれしい言葉をかけられ笑顔に
うれしい言葉をかけられ笑顔に

「勝ちたい思いが出てしまう」指導者も意識改革

指導者も、大会を通じて自らの指導スタイルを見直す機会となったようだ。コーチのひとりに聞くと普段は「時間がなくて競っていると、子どももそうだけど勝負に入っているので勝ちたい思いが出てしまう」という。

しかしこの日は「ちょっと(怒らないように)意識しながら、バッテンマスクをもらわないようにやっている」と、特に言動に気をつけていた様子。

コーチの皆さんも意識して指導
コーチの皆さんも意識して指導

全14試合、バツ印マスク着用者ゼロ

大会は1チームにつき3人ほど指導者がいたが、全員がコンセプトを守り抜き、全14試合を通してバツ印マスクを着用する人はひとりもいなかった。

子どもたちがのびのびとスポーツを楽しめる環境とは何かを改めて考え、指導のあり方を見つめ直してもらおうと開かれたこの大会、笑顔があふれ明るくプレーする子どもたちからは、その目的は十分に達成されたことがうかがえた。

子供たちはのびのびと笑顔で試合を楽しんだ
子供たちはのびのびと笑顔で試合を楽しんだ