アフリカ大陸南東部の島国・マダガスカル。
2025年10月に入って反政府デモが激化、クーデターが発生したと報じられ、大統領が国外に逃亡したとみられています。

暴動の引き金は、「生活の苦しさ」。
世界で最も貧しい国のひとつマダガスカルは、国民の約8割が1日2ドル以下で生活する貧困層です。

貧困や政情不安で苦しむ国民に追い打ちをかけるのが…毎年のように襲いかかるサイクロン。
最大瞬間風速50m/sを超える強いサイクロンの数は増加傾向です。

ユニセフ 気候変動担当 ヴァン・ウッフェレン氏:
マダガスカルは気候変動の影響を最も受けている国の一つです。

2025年は2月から3月にかけて、サイクロンが南部の地域を襲い約3万人が避難。
それから2カ月後の5月。

「FNSチャリティキャンペーン」の取材で、酒主義久アナウンサーはサイクロンで甚大な被害がでた南部の街・フォートドーファンに向かいました。
サイクロンの爪痕 屋根がない教室
街中には、壊れた道路や屋根が飛ばされた家がそのまま…。

サイクロンの爪痕はこの地区唯一の中学校にも。
教室を見せてもらうと…。

酒主義久アナウンサー:
上はほぼ一面が曇り空です。これは…もう屋外ですね。屋根がほとんどなくなっている。

屋根がなく、雨ざらしの教室。黒板は雨で痛み、剥がれてしまっています。
学校のほぼ全ての教室が被害に。しかし、財政的な支援がなく、修繕の見通しはたっていません。

約20年前のサイクロンで壊れた教室もそのままになっています。

3月のサイクロンでは、南部の地域だけでも200カ所以上の教室が損壊。
現在は仮設のテントで授業を受けていますが、一時、4万8000人の子どもたちが学校に通えない状況に。学ぶ機会が奪われました。
サイクロンの影響でマラリア感染急増も
子どもがいかに気候変動の影響を受けているかを示す指標「子どもの気候危機指数」で、世界10位とワーストクラスのマダガスカル。
取材したのは、この街に住むタヒアナさん(23)。7歳の娘ダニエラちゃんと暮らしていました。

その暮らしを一変させたのは2025年3月のサイクロン。
タヒアナさん:
大きな音がなったらびっくりして、すごく泣くようになってしまって。サイクロンの前はそんなことなかったのに。
もともと体が弱かったというダニエラちゃんの心に大きなダメージが。
影響はそれだけではありませんでした。

タヒアナさん:
私の娘がマラリアにかかったんです。
蚊が媒介し、発熱や嘔吐などの症状がでる感染症のマラリア。発症から24時間以内に治療しなければ死に至る可能性もあります。
現地の研究によれば、サイクロンがマラリアの感染を急増させている可能性も。サイクロンが医療設備を破壊し、医療システムの崩壊に繋がっているというのが理由です。
ダニエラちゃんも満足な治療を受けることが難しい状況でした。
サイクロンから約2カ月がたったある日…。

タヒアナさん:
ダニエラは弱ってしまって…歩けなくなって、亡くなってしまいました。
娘のダニエラは私にとって本当に生きる力になる存在でした。私の大事な大事な宝物でした。

酒主アナ:
話したくないこともあったと思うんですけれども、話してくれて本当にありがとうございました。
タヒアナさん:
話したことでサイクロンの問題を世界に知らせることができます。
その機会をもらえたことに、私は心から感謝しています。
収入源の畑も全滅…12人で分ける少しの食事
ここ数年、国内でサイクロンの影響を受けたのは600万人以上。
国民の8割が農業に従事しているこの国では、経済への影響も甚大です。

どのような影響が出ているのか。私たちはフォートドーファンからさらに南西に100kmほどのマロアリポティという農村へ向かいました。

酒主アナ:
この一本道の両サイドに木が植えられていますが、同じ方向に倒れているのがわかります。これもサイクロンの影響だということです。
村に到着し、話を聞いたのはルハラノさん(60)。

ルハラノさん:
ビュンビュンビュンビュンビュンビュン、サイクロンで強い風が吹いていたのよ。これが揺れてななめになって、全部だめよ。
畑で育てていたキャッサバという芋はサイクロンでほぼ全滅。
今の年収は、平均の1/4。日本円で約2万4000円に過ぎません。収入の1/3を失ってしまったのです。
ルハラノさんは夫を亡くし、12人いる家族全員を1人で支えています。
自宅は8畳ほど。炊事場で寝ることも…。

ルハラノさん:
広い家を借りるお金がないから、ここでみんなで寝ているのよ。

ルハラノさんが毎朝行うのは海辺にある井戸への水くみ。重さ数kgにもなるタンクを頭にのせ、歩きづらい砂浜をのぼるルハラノさん。

酒主アナ:
ずーっと果てしなく続いています…。
ルハラノさん:
背中も腰も全部痛いわ。
砂浜をのぼりきった後は赤土の上を進み、片道2時間の道のり。
ようやく到着すると息つく間もなく昼食の準備です。鍋に入っているのはとうもろこしだけ。
サイクロンがなければもう少し食べられたはずのご飯。

ルハラノさん:
味付けはないわ。きょうのご飯はこれだけ。

12人で分ける少しの食事。きょうのご飯はこの1食だけです。
酒主アナ:
お金があまりないことはサイクロンと関係していますか?
ルハラノさん:
ずっと前から貧しい。だからもっと貧しくなっているのよ。
そんなルハラノさんの言葉を神妙な面持ちで聞く子どもたち。

酒主アナ:
今の生活はどうですか?
フランシアさん(11):
わかりません。
通訳:
あなたの生活ですよ?
フランシアさん:
苦しいです。
「生活が苦しい」という正直な心の声。

酒主アナ:
さっきのご飯はおなかいっぱいになりましたか?
首をふるフランシアさん。
酒主アナ:
何が一番食べたいですか?
フランシアさん:
いろんな色がある料理が食べたい。
貧困に拍車をかけるサイクロン。気候変動が子どもたちの暮らしを苦しめています。
「FNSチャリティキャンペーン」ではマダガスカルの子どもたちのために皆さまからの募金をお願いしています。募金は、銀行振り込みのほか、クレジットカードなどもご利用いただけます。詳しい募金の方法については、FNSチャリティキャンペーンHPをご覧ください。
皆様からの募金は、ユニセフ、国連児童基金を通じマダガスカルの子どもたちを支援するために活用されます。皆様からのご協力とご支援を心よりお待ちしております。
【FNSチャリティー キャンペーンHP】
https://www.fujitv.co.jp/charity/guide.html
(「サン!シャイン」10月15日放送より)