ことし日本人2人目となるノーベル賞の受賞が決まった京都大学の北川進さん。

newsランナーは北川さんの同僚たちを取材すると、ノーベル賞発表の時期には、“残念会”を同僚と開いていたなど、おちゃめな一面も。

さらには温暖化対策にも応用が可能だという、その研究成果が見えてきました。

■受賞から一夜明け、北川教授への祝福続く

【吉原キャスターリポート】「拍手で迎えられます!ノーベル科学賞受賞決定から一夜明けて、北川さんです。にこやかな表情です」

9日朝、京都大学で、大勢の学生など関係者に祝福された北川進さん。

一夜明けて、改めて感想を聞かれると…

【京都大学・北川進特別教授】「昨日は、目がおかしくなるくらいフラッシュで、今日は明るいからちょっとまし(笑)」

■「忙しくなるなぁというのがものすごい実感」北川教授を吉原キャスターが直撃

ことしのノーベル賞で、坂口さんに続いて、日本人2人目の受賞が決まった北川さん。

しかも、2人とも関西出身!ということで、月曜日の坂口さんに続いて、北川さんにも吉原キャスターが直接話を聞きました。

【吉原キャスター】「改めて、ノーベル化学賞受賞決定おめでとうございます」

【北川教授】「ありがとうございます」

【吉原キャスター】「一夜あけて今の気持ち、改めていかがでしょうか」

【北川教授】「忙しくなるなあというのがものすごい実感です」

【吉原キャスター】「ワインをお好きだって聞いているんですけど、祝福の美酒はまだですか?」

【北川教授】「全く。昨日はもう“バタンキュー”です」

■「新しいチャレンジは科学者にとって醍醐味。30年楽しんできた」と北川教授

二酸化炭素など特定の物質を吸着・貯蔵できる特殊な構造体を開発したことなどが評価され、化学賞の受賞が決まった北川さん。

【京都大学・北川進特別教授】「新しいことをするチャレンジ。これは、非常に化学者にとって醍醐味。非常につらいこともあるが、新しいものをつくることによって、それを過去30年以上、楽しんできた」


■大切な言葉は「無用之用」

8日は、喜びの会見を終え、帰路についたのは、午後11時過ぎ。

集まった多くの学生たちと記念撮影に応じる一幕も。

その疲れも見せず、取材に答えてくれた北川さんに長い研究人生で、大切にしてきた言葉を教えてもらいました。

【北川教授】「無用之用(むようのよう)」

【吉原キャスター】「どういう意味でしょう」

【北川教授】「役に立たないものも、実は役に立つんだよという」

【吉原キャスター】「最初は役に立たないのかなと思っていてもやっていくと、いろんな人たちが集まってくると。これは役に立って、それがノーベル賞に繋がっていくと」

■独自取材で見えた“意外な素顔”とは?!

そして、北川さんは一体どんな人物なのか、newsランナーの独自取材で見えてきたのは”意外な素顔”でした。

20年以上北川さんとプライベートや研究で付き合いがあるという樋口雅一特定拠点准教授に受賞を知ったときの北川さんの様子について聞きました。

【京都大学・樋口雅一特定拠点准教授】「特段はしゃぐわけでもなく、たまったお仕事をされている感じ。お忙しいんだなと思いました」

(Q.冷静に仕事されていた?)
【京都大学・樋口雅一特定拠点准教授】「冷静に仕事されていましたね」


■「このパソコンはまだデーターが入ってないから軽いね」おちゃめな一面も…

とにかく研究熱心!ということですが、思い出に残っているエピソードがあるそうで…

それは、樋口さんがパソコンを買ったときのこと。

【樋口さん】「箱から開けて今からまさに使おうとしたときに、北川先生が通りかかられて、僕の新品のパソコンを持ち上げて『データが入っていないし軽いな』と言って去って行かれて。

その場に2,3人いたのですが、時間が止まったような感じになりました。これくらいの先生だったらデータも重さに感じるのかなって」


■「プレッシャーから解放されて本当に良かった」一字違いの後輩が語る

そして、京都大学には北川さんと名前が一字違いで同じ分野の研究者がいらっしゃいました!理学研究科の北川「宏」教授です。

【京都大学理学研究科・北川宏教授】「私からしたら(ノーベル賞を)とって当然。ずっとプレッシャーがあったと思うので解放されてよかった」

30年来の先輩後輩の関係だという2人は、ノーベル賞が発表される時期になると”秘密の飲み会”を開くこともあったそうです。

【北川宏教授】「夕方5時くらいから飲み始める。5時半ごろにこっそり裏口から自分の部屋に戻られる、電話が来るかもしれないというので。

6時過ぎに『あかんかったわ』と言って戻ってくる。それからが残念会なんです」

■母校も大喜び! 後輩思いの北川教授

京都市出身の北川進さん。母校の塔南高校を前身とする京都市立開建高校を9日に訪ねると、早速、校内には張り紙が。

【京都市立開建高校・尾崎嘉彦校長】「本日のホームルームの時間に紹介をして、生徒たちがびっくりして感激していた」

北川さんは自分の講演などに生徒を招いていて、生徒たちはことし12月にも研究室を訪れる予定だということです。

(Q.どういうことを伝えたい?)
【京都市立開建高校・尾崎嘉彦校長】「まずは『おめでとうございます』ということと、『開建高校の後輩たちもすごいよろこんでいますよ』ということは伝えたいです」

■さまざまな社会課題に貢献していきたい!

そして、京都市内には、北川さんが開発した材料を使って製品を作っている化学品メーカーがあります。

北川さんの素材を使って、2年前に製品化された“ガスの吸着剤”です。

たばこの吸い殻が入った容器の中の空気を、この製品を通してかぐと…

【記者】(容器臭いのをかいで)「全く、なんの匂いもしないですね」

匂いを消すだけでなく、さらに応用ができるそうです。

【大原パラヂウム化学・大原正吉専務取締役】「さまざまなガスをとれる。それによって1つは匂いをとれる目的もあるし、1つは人にとって有害なガスをとる。さまざまなガスに対する課題、社会課題にも貢献していきたい」

■「“気体”は“期待”される逸材!」熱い思いをユーモアで語る

日本人9人目となるノーベル化学賞の受賞が決まった北川さん。

これからは実用化に向けた取り組みをさらに広げていきたいと意気込みます。

【京都大学・北川進特別教授】「いろんな意味で役に立つシステムづくりも含めてできているんじゃないかと思っていて。気体はますます“期待”される材料なんです」

■北川さんの研究「二酸化炭素を回収して利用する技術」にも応用期待

北川さんの研究は、様々な分野での応用が期待されています。

・「ガス吸着剤」…工場などで出るガス、有害な物や臭いも取ることができ、すでに製品化されています。
・地球温暖化の原因とされる二酸化炭素を回収して、利用することができる技術

さまざまな場面での活用が期待されますが、番組コメンテーターの菊地幸夫弁護士は、研究費などの環境について懸念を指摘しました。

【菊池幸夫弁護士】「賞をとられた方が口々に言うのは、『いま日本の研究環境は必ずしも良くない』と。ここから先が心配。そういう面はあると思いますね」

基礎研究の大切さを改めて証明した北川さん。支援のあり方についても考えることが求められます。

(関西テレビ「newsランナー」2025年10月9日放送)

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