2024年に日本を訪れた外国人の数は過去最多の3687万人に上りました。2025年もこれを上回るペースで推移しています。
こうしたなか、この流れを山陰にも呼び込もうとスリランカ出身の旅行プランナーが奮闘しています。
旅先に選ぶのは外国人から見て魅力満載だという中山間地域、にっぽんの「田舎」を巡る旅の魅力とは?

「ワオ!ベリーナイス!アメイジング!」

日本の伝統工芸「組子細工」。
釘や金具を一切使わず、細い木片を幾何学的な模様に組みつける職人の繊細な技に驚きの声です。

イスラエルから日本を訪れたオレンさんとシャロンさん夫妻。
約3週間の滞在中、3日間を雲南・奥出雲エリアで過ごしています。

この日訪れたのは、雲南市の舟木木工所。
「組子細工」を生かして建具や雑貨を製作しています。

ここに夫妻を案内したのは、旅行プランナーのサミーラさん。
南アジア・スリランカの出身で奥出雲町で旅行代理店を開き、インバウンド、外国人観光客をターゲットに山陰の中山間地域、いわば「田舎」を訪れる旅を提案しています。

サミーラさん:
日本の伝統文化と自然を楽しみたい、あと人とのふれあい、そういうのを聞いて今回のプラン。

サミーラさんのツアーはすべて「オーダーメード」。
旅行者の希望や趣味、年齢などをもとにプランを提案しています。

今回、夫妻に提案したのは雲南市や奥出雲町などを巡り座禅や陶芸、藍染など日本の伝統や文化にふれる体験をします。

工房では、現代の名工にも選ばれた職人の手ほどきで組子細工を体験しました。

イスラエルからの観光客・オレンさん:
商品を買うのではなく私たちは思い出や冒険、友達を求めている。東京でショッピングをするよりもよっぽどいい体験だと思う。

シャロンさん:
私もそう思う。

日本独自の木工加工の技に、それを駆使する職人の腕。
島根にまで足を運んだ甲斐があったと満足そうです。
このあと夫妻は城下町・松江を散策、島根の旅を満喫しました。

見送ったのもつかの間。

サミーラさん:
戻ってまた次の…3時から…結構ギリギリ。

この日は別のツアー客が待っているそうで、早々に松江を離れました。

サミーラさんは25年前、大学進学のため来日。
卒業後、東京の旅行関連会社に就職しました。
その後、20年前に大学の先輩に誘われ隠岐・海士町へ。
島の魅力に魅せられて移住し、地域おこし協力隊として観光の仕事に携わりました。
ここで妻と知り合い、そのふるさと・奥出雲町に移住しました。

サミーラさん:
黄色いのがツアーです。

田中祐一朗記者:
ほぼ入っていますね。

サミーラさん:
私だけじゃなく、ほかのガイドにも入ってやってもらってる感じ。

旅行代理店を始めて3年、仕事は軌道に乗ってきました。
現在は主に香港やシンガポール、中東のイスラエルがターゲット。
長期休暇が重なる春や秋、クリスマスシーズンにはほぼ毎日、ツアー客を受け入れています。

サミーラさん:
皆さん、ゆっくり過ごしたいという思いが一番あると思うんですよね。
その中にちゃんと地域のことも分かりながら、そのおいしい空気を吸いながら、おいしいものを食べながらっていうところが、ちょうどなんかフィットしたんじゃないかなとは思いますよね。

多くの訪日旅行客が訪れる東京・京都・大阪を結ぶいわゆるゴールデンルートでは、観光地や交通機関の混雑、宿泊費の高騰など「オーバーツーリズム」が問題となる中、サミーラさんは山陰など地方でこそ日本の伝統や文化、自然に出合えると考え、オリジナルのツアーを提案するようになりました。


「せっかく来てもらったら、奥出雲町ってあんなんあったなって記憶に残してほしいよね。せっかくだったらね。」
「せっかくハネムーンできているってことに対して、何かできたらいいな。」

9月下旬、サミーラさんが訪ねたのは奥出雲町にある老舗の豆腐店。
これまでにも数多くのツアーで立ち寄ってきました。

この日は、次に案内する予定のハネムーンのおもてなしプランについて相談しました。

「来た時のうわーみたいな感じでやってみて、やってみたらロウソクだけでもいいし」
「簡単なものだったらかける。ハートくらいなら。」

サプライズとして、特製の「豆腐ケーキ」を用意することにしました。

田中祐一朗記者:
いつもこうやってツアーの中身を決められるんですか?

サミーラさん:
こんな感じです。お客さんからもいろいろなアイディアもらっている。

奥出雲に住む地の利を生かして、口コミ情報を集め、足で「旅先」を開拓します。

奥出雲とうふ・いしだ 石田信雄さん:
サミーラさんがいろんな方を連れてきては景色がすばらしい、きれいだねとかって言うと、「えっ」て僕らは思うんだけど、よく見たらそうだよねって気づくわけで。
それってやっぱり外部の人が来てサミーラさんみたいに来ていないと気づかないですよね。良さにね。

外国人だからこそわかる、日本の地方=「田舎」の魅力を、ほかの外国人にも伝えたい、そして少子高齢化が進む中山間地域を元気にしたい。

そんな想いが地元の人を巻き込み、「ここだけ」の旅をつくりだしています。

サミーラさん:
出来上がっているものをパッケージにするのは簡単。そもそもないから作らないとない。ここに来て、ここの価値を感じる方に、いかに良い体験を提供して、それに良い対価をもらうということをやらないといけない。

奥出雲の魅力を外国人観光客に届けたい!
サミーラさんの東奔西走の日々が続きます。

TSKさんいん中央テレビ
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