福岡・柳川市の水族館で、中学1年の最年少館長が就任した。子供の頃から水族館に通い続け、生き物への深い愛情やその知識の広さを見込まれ、水族館側からスカウトされ新館長に就任したのだ。

新たな水族館長は中学1年生

『やながわ有明海水族館』の4代目館長に就任した中学1年の岩崎優介さん(13)。自宅の部屋を案内してもらうと、室内はたくさんのフィギュアであふれていた。中でも目を引くのは魚のフィギュアだ。

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特に好きな魚は、オイカワ。「オイカワはけっこう身近な川にいるんですよ。オスは婚姻色が出るときれいな色になって、なおかつおいしい!」と笑顔を見せる。

岩崎さんが本格的に魚を好きになったのは、小学生の時。図鑑に加え、国内の固有種や魚の生態を紹介した専門書も取り寄せて知識を蓄えた。

小学校では、ジンベエザメやムツゴロウ、ワラスボといった珍しい魚の特徴をまとめた手づくりの“魚の新聞”を作成、イラスト付きで特徴や食べ方も紹介した。

さらにお小遣いで魚を買ってはスケッチを楽しみ、自分で料理することもあったという。

この日は父親運転の車で“職場”へ向かう優介さん。1か月に2日程度、館長業務に携わるため、自宅から約1時間半かけて『やながわ有明海水族館』に出勤する。

中学生の息子が突然、館長に。父親の孝二さんは「息子に館長が務まるのか不安だった」と話す。それでも「できるようになるためにやらせるのが大事かなと思い、家族で息子のチャレンジを応援すると決めた」という。

「館長にならないか」小2から通いスカウト

『やながわ有明海水族館』は、子供たちに生き物に興味を持ってもらおうとNPO団体が運営。

柳川の周辺や有明海の魚を中心に約70種を展示し、地域の自然を身近に感じられる施設になっている。

小学2年の頃から毎月のようにこの水族館を訪れていた優介さん。豊富な知識と熱意をかわれ、「館長にならないか」と打診されたという。「最初は、自分には無理じゃないかと思った」という岩崎さんだが、無理せずにできる分でいいと言われ、周りのサポートもあることを知って引き受けることになったという。

これまで歴代の館長は高校生や大学生が務めていたが、岩崎さんは史上最年少の館長となる。水族館側は「子供の目線で魚のことや命の大切さを発信してもらいたい」と優介さんに強い期待を寄せている。

「この子になんでも聞いて下さい」

「エサをやった時に、魚がいっぱいワーって群がってくる姿がかわいくて好き」。館長としての仕事で、一番楽しいのが“エサやり”だという。

楽しいエサやりに夢中になり来場者にも気が付かないほどの岩崎さん。その様子を目にした父親の孝二さんは「ちゃんと接客しろと言いたいが…、気付いて欲しいな」と、もどかしげ。しかし、しばらくしてしびれを切らしたのか「この子、館長なんで、なんでも聞いて下さい」と来場者に声をかけた。

それを聞いた来場者が「『シオマネキ』の大きい爪、左が大きいのと右が大きいのとあるんですね。どっちか決まってるわけじゃないの?」とさっそく質問。

すると「決まってないんですよ、実は。それは右利きか左利きかみたいなもので、有明海は確か右手が多いらしいですよ」と岩崎さんはすぐに回答した。

続いて「これは、何ですか?これは何?」と水槽の中を指さす男の子。「これは『トビハゼ』っていって…」と岩崎さんが説明を始めると、男の子は「捕まえたい!」と好奇心旺盛な様子。すると岩崎さんは水槽から魚を取り出し、男の子に手渡す。「捕まえた!」と大喜びだった。

環境破壊への強い危機感

つづいて岩崎さんが来場者を案内したのは、水族館裏にある堀。網を投げ込むと銀ブナがかかった。

「銀ブナは鯉の仲間で、実はほとんどがメスなんですよ。オスは1000匹に1匹しかいないらしくて。じゃあ、どうやって産卵するのかと言うとドジョウとか他の魚の精子を借りてそれで産卵するらしいです」と専門家顔負けの知識を披露した。

こうした活動の目的は、海や川に生息する魚介類を子供たちに知ってもらうこと。

特に淡水では元々いた魚が減る一方で、外来種が増えている状況だ。「生き物についてたくさん知ってもらい、大事にしようっていう意識をもってもらって、保全活動とかにも取り組んでもらえたらいいな」と話す岩崎さん。身近な海や川で起きている現状に危機感を持ち、定期的な生態調査を行っている。

「生き物にもっと詳しくなっていろんなことを知れる館長になりたい。子供たちが生き物について学べる勉強になる場所にしたいです」。

岩崎さんが求める理想の水族館の姿だ。子供たちが魚に触れて楽しく学べる場所。そんな居心地の良い水族館を目指し、中学1年生館長の奮闘は続く。

(テレビ西日本)

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