がんの中で日本人女性が最も多く発症しているのが乳がん。日本人女性が乳がんにかかる割合は「9人に1人」(2021年・国立がん研究センター)といわれ、年間に診断される人は10万人近くに上る。

ステージⅠで見つかれば97%くらい完治

日本人女性の9人に1人がかかるといわれる乳がん。予防に重要なのが早期発見するための乳がん検診だ。検診を受けたことがあるのか。街で聞いた。

この記事の画像(17枚)

「毎年、受けています。周りに乳がんになった人が、結構いますね。早期発見で手術して今、元気な人が多いんですけど」(60代)と話す女性がいる一方で「受けたことは、ないです」(20代)。「痛いと聞くので、痛いならあまりしたくないなって感じ」(30代)と若年層は、検診と距離があるようだ。

40歳から69歳の女性の乳がん検診の受診率は、2022年時点で47.4%(国民生活基礎調査)。半数に満たない状況だ。

乳がん検診の重要性について乳腺外科の『さくらウェルネスクリニック』の山田舞医師は「乳がんは、すごく予後が良いがんなので、ステージⅠで見つかれば97%くらい完治すると言われていて、ステージⅡやⅢでも完治を目指して治療ができるので、検診を受けて早く見つけて完治させていくことがすごく大事」と話す。

代表的な症状は“しこり”

乳がん検診は主に乳房専用のX線撮影『マンモグラフィー』で行われる。ホルモンバランスの影響を受けやすい40代と閉経後に肥満傾向になりやすい60代で発症するケースが多く、国の指針では40歳から2年に1度の定期的な検診が推奨されている。

早期発見のきっかけになる代表的な症状が“しこり”だ。山田舞医師によると、2センチ以下がステージⅠになるという。

「胸にクニュッとした物があって。ライチの皮をむいた、プルっとした物があるような感じがした」と話すのは、4年前、41歳のときに右胸に“しこり”が見つかった平石里紗さん(45)。

「でも子育て、おっぱいをあげた後の1年半後だったから、乳腺が詰まっているのかなと思って。まさか、がんとは思っていないので」と発見当時を振り返る。

“しこり”が見つかる以前、乳がん検診は一度も受けたことがなかったという平石さん。検査の結果、ステージⅠの乳がんだと診断された。

手術で右胸を全摘出 しかし…

当時、長男はまだ2歳で夫の大輔さん(47)は県外に単身赴任中だった。「気持ち的には沈む、暗くはなったが、会社に検討してもらって福岡に戻してもらえた。テレワークをさせてほしいとか融通を聞いてもらって、何とか家族の面倒をみることができたと思う」と話す。

平石さんは手術で右胸を全摘出。放射線治療を受け、2カ月後には美容師の仕事に復帰する予定だったが、その後の細胞検査で悪性度が高いがんであることが判明し、抗がん剤治療が始まった。

そのときの心境を平石里紗さんは「自分の中では乳がんと告知された時よりもショックだった。お客さまの髪をきれいにする、自分の髪も大切にしている人間だったので、それがなくなってしまうのが、正気でいられるのかなと」と振り返る。

胸を失った上に抗がん剤の副作用で髪が抜けてしまう辛さ。そして全身に走る痛みと闘う中で芽生えたのが『病気でも隠れずに暮らしたい』という思いだったという。

「一番、最初に坊主になるって分かったとき、抗がん剤治療をするとなったときに、お客さまがこれを送ってくれて。一番、最初に巻き始めたのがこれですね」と平石里紗さんはターバンを見せてくれた。

闘病中もお洒落を楽しみ、手術から1年後には美容師として職場に復帰。さらに同じ境遇の乳がん患者などに洋服選びのアドバイスやメークレッスンなどをする総合スタイリストとしての活動も始めた。

そんな平石さんが今、乳がん検診について思うことは「私の場合は早期発見だからステージⅠ。それでもこんなに苦しい治療だったから、より早く気付くほど軽めの治療で終わるのであれば、早期発見のためには検診が必要」ということ。

患者だけでなく家族のケアや支援の大切だ。山田舞医師によると、母親ががんなどの病気を隠している場合、子どもは何かを感じながらも聞くことができずに不安を抱え込んでしまうことがあるので、情報を共有して家族全員で治療に向き合うことが重要だということだ。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
テレビ西日本

山口・福岡の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。