「遭ってしまったら」どうするか

もし市街地で、クマと遭遇してしまった場合はどうすればいいのか。現段階では、従来の生息域における対処法を応用することが現実的だろう。

まず重要なのは、とにかく落ち着くことだ。それからゆっくりと後ずさりして、その場から立ち去ること。パニックから大声を上げたり走り出したりするような急な行動は、クマを刺激し、攻撃を誘発しかねない。ツキノワグマは時速約40km、ヒグマは時速約60kmで走るため、追いかけられたら逃げ切ることは不可能だ。

エサを得るためアピールするツキノワグマ。知能は高い
エサを得るためアピールするツキノワグマ。知能は高い

向かってくる状況となれば、防御に徹するしかない。両手で首元を覆い、地面に伏せて体を小さくする「防御姿勢」を取ることが第一である。クマは顔や頭部を狙う傾向が強いため、防御姿勢をとってダメージを最小限にとどめながらしのぐしかないだろう。

ブナの実大凶作で出没増加か

ツキノワグマの主な食料となるブナの実の豊凶は、クマの出没数や人身被害の件数と密接に関わっている。東北森林管理局によると、2025年はブナが大凶作となる見通しで、これは、クマによる人身被害が過去最多となった2023年以来2度目のこと。今年も、エサを求めて人里への大量出没が懸念されている。

前回の凶作時に街へ出没し、エサを得ることを経験した子グマが、2年を経て成獣になっていることも不安要素のひとつだ。彼らは「人里に行けば食べ物がある」と学習しており、再び街へ姿を現す可能性が高いといえる。

だからこそ、今年の秋は、これまで以上に都市部でのクマ対策が重要だ。

『ドキュメント クマから逃げのびた人々』(以上、三才ブックス)

風来堂(ふうらいどう)
旅、歴史、アウトドア、サブカルチャーが得意ジャンルの編集プロダクション。『クマから逃げのびた人々』、『日本クマ事件簿』(以上、三才ブックス)など、クマに関する書籍の編集制作や、雑誌・webメディアへの寄稿・企画協力も多数。

風来堂
風来堂

旅、歴史、アウトドア、サブカルチャーが得意ジャンルの編集プロダクション。『クマから逃げのびた人々』、『日本クマ事件簿』(以上、三才ブックス)など、クマに関する書籍の編集制作や、雑誌・webメディアへの寄稿・企画協力も多数。
ほか、編集制作を担当した近刊に『世界のお弁当とソトごはん』(岡根谷実里/三才ブックス)、『ニッポン秘境路線バスの旅』(交通新聞社)、『戦う山城50』、『カラーでよみがえる軍艦島』(以上、イースト・プレス)など。
『戦う山城50』(イースト・プレス)『おもしろ探訪 日本の城』(扶桑社文庫)など、代表の今田壮は「古城探訪家・今泉慎一」名義での歴史系著作も手がける。