ゴミ当番をしていた親子にトラックの荷台部分の扉を衝突させ、死亡させたにもかかわらず現場から逃走したとして、過失運転致死などの罪で起訴されている男の裁判で、検察側は懲役7年を求刑した。一方で弁護側は執行猶予付きの判決を求めている。
2人死亡のひき逃げ 一部を否認
過失運転致死罪などで起訴されているのは沼津市に住む鮮魚販売業の男(87)で、2024年1月、同市の県道でゴミ当番をしていた近くに住む女性(当時59)と息子(当時33)のトラックの荷台部分の扉を衝突させて死亡させたにもかかわらず、救護や通報などをすることなく現場から逃走した罪に問われている。
これまでの裁判で男は「衝突音は聞こえなかった」と述べた上で、「弁護人から証拠を見せられて事故を起こしたことがわかっただけで、事故当時の記憶は無く、捜査段階でどのような供述をしたかも覚えていない」と、2人を死亡させた事実については争わない姿勢を示しつつ、起訴内容の一部を否認。

弁護側は執行猶予求める 理由は?
10月10日の裁判では、検察側が3回に及ぶ実験の結果、事故の際に振動や衝撃があったと認められると結論付けた。
また、荷台左側パネルの施錠設備が壊れていることを十分認識しており、走行前に施錠を確実にするべき義務があったのに怠ったと指摘したほか、事故の前にもパネルを開けたまま車を走らせ、電柱に衝突させたり、知人から注意されたりしていたことも明らかにしている。
その上で、「人と衝突したかもしれない」という認識を持ちながらも事故現場を立ち去るなど動機や経緯に酌量の余地はなく、被害者遺族が厳罰を求めるのも当然で、自身の起こした罪の重さや自身が奪った被害者2人の命の重さを十分に認識させるべきとして懲役7年を求刑した。
これに対し、弁護側は男が反省の意を示し、さらに免許も返納して車も処分したことから再犯のおそれもないことを理由に、執行猶予付きの判決を主張している。
遺族は怒り 一方で男は…
10日の冒頭には、妻と息子を一度に亡くした遺族が意見陳述に立ち、「何の落ち度もない2人の命が理不尽に奪われた。最愛の妻のことを“おばさん”呼ばわりし、意見を聞かれても『別にないよ』と反省の姿勢を微塵も見せず、遺族の心情を逆なでし続ける行動を取っているこの男を『年を取っているから可哀想』と思うことはやめてほしい」と怒りを滲ませ、「極刑を望む。2人の尊い命を虫けらのように奪い、反省もしていないこの男を決して許さない。厳罰を望む」と口にした。
一方、すべての審理を終え、最後に証言台の前へと行くことを促された男は「話すことはないよ」と弁護士に言い捨て、裁判長から「言っておきたいことはありますか?」と問われても「ない」と首を振ったほか、裁判中は居眠りをしているような様子も。
判決は11月13日に言い渡される。
(テレビ静岡)