「ゴミ出しのルールが守られていない」「スーツケースを引きずる音がうるさい」「タバコのにおいが気になる」いま、都内で営業している民泊をめぐり、地域住民からの苦情が相次いでいる。
新宿区は9月12日、都内で初めて民泊12業者22施設に対して30日間の業務停止命令を出した。
業務停止命令を受けた民泊は、どのような場所にあるどのような建物なのか。
区は事業者名をHPで公表しているため、8日、そのうちの1カ所を訪ねてみた。
その施設は、新宿から大江戸線で数駅、駅から徒歩10分くらいの場所にあった。
3階建てのアパート風の建物で、長期間放置されているようなスーツケース2つのほか、ゴミ袋などが敷地内に散乱し、道路に面した場所には大きなソファが立てかけられたままになっていた。
繁華街や駅から近いということでもなく、戸建て住宅が並ぶ閑静な住宅街の間にポツンと民泊が営業していたのだった。
新宿区によると「ゴミ出しのルールが守られていない」との苦情が近隣から寄せられていたという。
区はこの事業者が区への定期的な報告を怠ったことなどを理由に業務停止命令を出したという。
新宿区の民泊届け出は、3272件で都内トップ。
区は、都市部でのルールを新たに設けるなど現状のルールを改善するよう都や国に求めていきたい、としている。
こうした中、東京23区で3番目に民泊登録数が多い豊島区が民泊条例を改正し、民泊が営業できる期間を夏休みと冬休みに限定し、住居専用地域と文教地区での開業の禁止を盛り込む方針を発表した。
豊島区によると、民泊に関する苦情件数は、2022年度が29件だったのに対し2024年度には120件と急増している。最も多いのがゴミの取り扱い、続いて騒音、標識の緊急連絡先が通じない、など。また、タバコのにおいなどの苦情も寄せられているという。
区が町会にアンケート調査を行ったところ、民泊が町会内にできたことで困ったことがあると答えた町会が7割を超え、生活環境が悪化したと答えた町会は6割を超えた。
こうした調査を踏まえ豊島区は、生活環境の悪化を防止するため、早急に条例改正に向けた見直しが必要と判断、有識者らからの助言をもらい、規制を強化する条例案を公表した。
区は、12月の区議会に条例案を提出し、2026年7月ごろから、規制強化の実施を始めたい考えだ。
これに対して、民泊事業者のグループが規制を強化されるとヤミ業者が増え、かえって環境が悪化すると指摘。
悪徳業者への取り締まりを強化し、勉強会などを開いてルールの徹底することなどを提案しているが、町会や地域住民から民泊営業への理解を得ることがカギとなりそうだ。