中永先生は「アーバンベアは確実に増えている」としたうえで、「犬の散歩中や自転車に乗っていて襲われた方もいる」と話す。街中に出没するアーバンベアは、人の存在に慣れており、野生下のクマとは行動パターンも異なっている。

クマは本来昼行性だが、札幌市東区のケースでは、最初の目撃が午前3時30分頃。まだ人通りが少ない夜明け前から行動していた。

また、アーバンベアは、身を隠せる場所を探しながら速足で移動する傾向があるという。移動の途中で人と鉢合わせた場合は、逃げるのではなく、排除しようと攻撃に転じることもある。本来クマは臆病であり、すすんで人を襲うことは稀だと考えられている。ところが近年は、人間を恐れず、むしろ積極的に襲撃する事例が目立ち始めているのだ。

都市という特殊な環境がクマの緊張と警戒心をさらに高め、行動を予測しづらくしているのではないだろうか。

リスクマップの活用や戸締りを

都市部では、クマの目撃情報がSNSや行政の通報網を通じて迅速に共有されやすく、山よりも早めに危険を察知できる環境にある。さらに近年は、AIを活用した「クマ遭遇リスクマップ」の開発も進んでいる。

日本気象株式会社による「クマ遭遇リスクマップ」(日本気象株式会社リリースより)
日本気象株式会社による「クマ遭遇リスクマップ」(日本気象株式会社リリースより)

日本気象株式会社では、気象情報の解析で培った高度なデータ技術を応用し、植生や地形、気候に加え、自治体が公表する過去の出没情報を組み合わせて、国内初の「人の生活圏における遭遇リスク」に焦点を当てたリスクマップを作成。対象は、ツキノワグマの生息域である本州全域で、今後はヒグマにも対応できるよう開発を進めている。マップは、日本気象株式会社のHPで確認することができる。

さらに基本的な対策として、住宅の戸締まりを徹底することも欠かせない。クマが人家に侵入する例も多数報告されており、とくに窓や勝手口の管理は重要だ。また、クマは非常に優れた臭覚をもった動物であり、生ゴミやペットフードを放置しないなど「匂いで寄せつけない工夫」も有効な予防策になる。