土台となる擁壁ごと崩れ、マンションの敷地内に倒れこんだ住宅。
一夜が明けた1日、現場では、おびただしい量のがれきの撤去作業が続けられました。

東京・杉並区にある木造2階建ての住宅が突然倒壊したのは、9月30日午後7時過ぎのこと。

近隣住民は当時の様子を「スローモーションみたいにダダダって崩れ落ちた」と話します。

事故前の衛星画像と比べると、中央にある茶色い屋根の建物がなくなっているのが分かります。

住宅には50代の父親と20代の息子が住んでいましたが、当時、息子は外出中。
父親は崩れる直前に外へと逃げ無事でした。

近隣住民:
(Q.倒壊した住宅について)私はここ23年住んでるんですけど、それ以前から。見ため的にはそうですね、築50年以上建っているような建物。

かなりの築年数がたっていたという住宅は、なぜこのタイミングで倒壊したのでしょうか。

「イット!」が1級建築士の木村修さんと現場に向かうと、住宅の立地に特徴的な一面があることが分かりました。

1級建築士・不動産鑑定士 木村修さん:
(Q.倒壊した住宅)マンションの土地から、恐らく4~5メートルぐらい高いところに擁壁が建って、擁壁ごと崩落してマンション側に雪崩のように崩れている。

崩れた住宅と隣のマンションの間にはかなりの高低差があり、住宅は擁壁ごと崩れ落ちたとみられます。

2025年1月に撮影された現場の写真では、擁壁は大きくひび割れ、マンションとの間の小道は人が近寄らないように規制されていました。

近隣住民:
夏前くらいに杉並区の入らないでくださいみたいなロープが出て、最初なかったんですよ。あそこは「子どもは絶対通っちゃダメよ、絶対崩れるから」って言って。

倒壊直後の現場の映像を見ると、擁壁はマンションに面した部分が丸ごと崩落。
その断面は2025年1月の時点でできていた、ひび割れ部分とほぼ一致していました。

この擁壁が崩落した原因として、1級建築士の木村さんがまず挙げたのが“老朽化”です。

1級建築士・不動産鑑定士 木村修さん:
(Q.擁壁の状態)様々な要因が考えられるが“老朽化”。造ったときから年月がたつと強度が元よりは下がってきてしまう。そういった古い基準で建てられた擁壁で脆弱なところに“何らかの外力”が。

加えて崩落の引き金となった要因の1つとして挙げたのが、9月11日に首都圏を襲った大雨の影響です。

1級建築士・不動産鑑定士 木村修さん:
最近の豪雨で擁壁の中に水がたまって、土の力よりも水圧がドーンとかかってきて、それが水を逃がしきれずに擁壁の倒壊に至った可能性。

近隣住民も「擁壁のひび割れ箇所から水が出ていた」と証言しています。

近隣住民:
何十年か昔の擁壁の造り方だから、そんなに(壁も)厚くはないだろうね。(擁壁が)割れてヒビが、そこから水が出ていたのは見た。

この住宅を巡っては、擁壁の補強工事を行うよう杉並区が指導している最中でした。

先週になって所有者から「工事ができる業者が見つかった」と返答があったものの、補強が間に合わないまま事故は起きてしまいました。

1級建築士・不動産鑑定士 木村修さん:
かなりのクラックが入ってますね。相当危険な状態だと思う。危険な状態が放置されていたのかな?という印象。