続いては、生活に身近な水道料金について。ここ数年、各地で水道料金の値上げが議論となっています。値上げの背景などを取材しました。
8月26日嬉野市や白石町など県西部の7つの市町の市長や町長らが出席し、会議が開かれました。テーマは来年4月からの水道料金の値上げ。平均30%アップとなる料金改定について話し合われる予定でした。しかし…
【白石町 田島健一町長】
「料金上げることにはみなさん、反対ではない。利用料においても、いろいろバランスが。50%上がるところもあれば30%上がるところも。それも市町ごとで違うじゃないですか。やっぱりそこらへんが、みんなでガチっとするためにはもう少し」
この日、議案は直前で取り下げられ、見送りとなりました。
今のところ、次の話合いのめどは立っていません。
ここからは取材を担当した大川内記者です。よろしくお願いします。
【大川内記者】
今回取材したのは、多久市や武雄市、小城市などを含む佐賀西部広域水道企業団です。2020年に水道事業を統合し人件費の削減や施設の運用を見直すなどコスト削減に取り組んでいます。
【アナウンサー】
Q.統合してまだ5年ということですが、なぜ値上げの議論になったんでしょうか?
【大川内記者】
実は水道企業団は、統合以降も赤字が続いています。理由について聞きました。
【佐賀西部広域水道企業団 秀島安則事務局長】
「人口減少、また節水型社会の進展、料金収入の減少や物価高騰などにより、原価割れの赤字状況でございます」
比較的山間部が多く水を送り届けるポンプや設備に費用がかかるという県の西部地区。水道企業団の料金は国がまとめた資料によると、一般家庭の平均で月に4653円と、県内の他の事業者と比べると高い設定となっていますが、人口減少や物価高騰などの影響で赤字が続いています。
さらに追い打ちをかけるのが設置から50年以上経つなど老朽化した設備の更新作業です。
【佐賀西部広域水道企業団 秀島安則事務局長】
「今後多くの施設が老朽化による更新時期を迎えるため将来の建設改良費用の資産維持費として料金収入に見込んでおく必要がございます」
全国的にも値上げの動きが広がっていると言います。
【佐賀西部広域水道企業団 秀島安則事務局長】
「平成30年度から令和5年度までの6年間で水道料金の値上げを行った水道事業者は、358団体。全国の水道事業の約3割程度でございます」
【大川内記者】
県内にも値上げした事業者があります。
有田町と鹿島市では去年それぞれ15%引き上げました。
施設を新しくするために多額の費用が必要、人口減少、財源不足という理由があげられました。
また、水道企業団の昨年度の工事費用については、約28億円となっています。
これだけ多額の金額がかかる上、資材の高騰などもあるため、全国的にも値上げがやむを得ないという状況です。
【アナウンサー】
Q.今回の値上げの議論について7市町はどのように受け止めているんでしょうか。
【大川内記者】
現在、7市町の料金設定は各市町がそれぞれ決めているため、受け止めに違いが出ています。
【大川内リポート】
「見送りとなった水道料金値上げについて、各市町はどのように考えているのか。首長に話を聞きます」
【江北町 山田恭輔町長】
「水道料金というのは、住民生活にも大変密接な料金でありますものですから、ぜひ料金の改定案について、低使用量層の改定案の見直しを、申し入れをしてきた」
江北町は値上げに理解を示しつつも、水道をあまり使わない世帯への値上げ幅について見直しを求めたいとしています。
同じく、武雄市も一定の配慮が必要だと訴えます。
【武雄市 小松政市長】
「水道使用量が少ない世帯への配慮が必要であると。そのために引き続き検討が必要であるということで私からは現案に対しては反対であるということを申しました」
このほかの市町の意見です。
大町町や白石町は、「避けては通れない喫緊の課題」嬉野市は、「これ以上赤字を増やすことはできない」多久市は、「負担の公平性という意味で料金の統一が成される部分では賛成」各市町とも、料金値上げについては、賛成する考えです。
また小城市は、中心部の小城町が水道企業団による運営でなく、市内で地域差が生まれることから「料金改定時期を遅らせることを求める」としています。
水道料金の値上げは生活に直結する問題である一方、安全な水の供給を維持するために避けては通れないという現状があります。
まずは、利用者に値上げの背景を理解してもらい、適切な料金設定を見出せるかが、今後の議論の中心となりそうです。