長引く物価高騰は学校給食にも影響を及ぼしている。福岡では4月、皿に「唐揚げ1個」の写真が話題に。広島市は小学校の給食費1食250円を維持しつつ、子どもたちの栄養と楽しみを守ろうと栄養士が奮闘している。
“数字”と格闘する栄養士たち
この夏、広島市南区に栄養士約70人が集まり、2026年度以降の献立や調理法を確認していた。
アレルゲンフリーのルウを使用したり、菌が繁殖しやすい夏場は和え物を提供しないなど安全面での制限が増える中、頭を悩ませるのが高騰する食材だ。

「牛肉は高いですね」「1人あたり1~2グラム使っていた赤ワインはゼロにして、そのお金をほかに回しています」
そこには“数字”との格闘があった。
唐揚げに使う鶏肉も、部位や産地ごとに価格を見比べる。ある栄養士は「むね肉なら15.28円、国産もも肉は19.9円。輸入だと28.73円で10円以上高い」と電卓をたたく。栄養、味、予算…すべてのバランスを追い求める作業が続く。

食材費を節約しつつ、冷凍食品の活用や調理法の工夫も欠かせない。
口田東小学校の栄養教諭・山中浩美さんは「うまみの少ない汁物は野菜をしっかり炒めて甘みを引き出します。鰹節を強く煮出してだしの味を濃くするなど、『おいしさ』が変わらないように工夫しています」と語る。
フルーツポンチから消えた食材
しかし現実には、少しずつ給食の内容も変化している。
2019年9月に4回出ていたデザートが、2025年9月には半分の2回に。さらに人気メニューのフルーツポンチで比較すると、材料から「黄桃」が消えた。

己斐小学校の栄養教諭・石井美穂さんは「デザートの回数が減っているのがつらい。栄養価もしっかりとれて、子どもがわくわくする給食を出せるように頑張りたいんですけど…」と打ち明ける。

それでも給食を楽しみにする子どもたちの声は明るい。小学校の児童は「おいしいです!好きな献立は唐揚げ」と笑顔を見せ、「給食大好きな人?」と問いかけると多くの手が一斉にあがった。
無償化や低コストを実現する地域も
広島市は国の補助金制度を活用し、小学校の給食1食あたりの保護者負担を250円に据え置いている。

さらに県内では大竹市が小中学校9校で給食無償化を実現。安芸太田町は地元産のコメを使ってコストを抑え、神石高原町は「神石高原ランチ」として和牛やニューピオーネなどの地場産品を給食に取り入れ地産地消の学びにつなげている。

物価高騰でも給食の時間に広がる笑顔を守るため、栄養士たちの奮闘は続く。山中さんは「限られた予算の中で成長につながる栄養と楽しみを大切にしたい」と話す。
現場の工夫一つひとつが、子どもたちの『おいしい』を支えている。
(テレビ新広島)