2025年に入ってから度重なるトラブルに見舞われた駿河湾フェリーだが、9月になってようやく完全な形での運行を再開させた。ただ、経営状況は依然として厳しく、存亡を賭けた岐路に立たされている。
JR駅近くの好立地にターミナルが完成
2025年4月、JR清水駅のすぐそばに新たなターミナルが完成した駿河湾フェリー。
立地の良さから利用者拡大に向けた起爆剤としての効果に期待が寄せられている。
ただ、肝心のフェリーは車やオートバイが乗り入れる際に使用する台船に損傷が見つかり、2025年1月から3カ月にわたって運休。

4月の新ターミナルオープンにあわせ人や自転車の乗船に限って運行を再開したが、今度は船体のプロペラに破損が見つかり、夏の書き入れ時に再び運休を余儀なくされた。
待望の新ターミナルでの乗船
こうした中、造船会社での修理を終えた台船が8月30日に清水港へと戻ってきた。
出迎えた作業員たちは接岸位置などを確認しながら慎重に作業を進めていく。

また、新たな乗り場から車やオートバイをフェリーに乗せるのは初めてとなるため、再開を前にスタッフは乗船案内などのオペレーションを入念に確認。
そして、再出発となった9月12日は平日にも関わらず朝から続々と車が乗りこむ様子が見られた。
名古屋から来た男性は「この日を待っていた。よく乗っていたので早く乗りたかった」と喜びを口にし、長野から来た男性は「ちょうど子どもの学校も振替で休みだったので」と”この日”を心待ちにしていた様子で、ふじさん駿河湾フェリーの山本東 理事長も「ようやくここまで来たが、これからがスタートなので利用客に満足してもらえるように全力でフェリーに乗る魅力を伝えていきたい」と意気込む。
地域活性化に意欲も見せるも…
今回の運行再開にあたってはサッカーJ1・清水エスパルスとのコラボ企画も実現し、選手の声で景勝地を紹介する。

また、フェリー乗り場のすぐ隣に移転した飲食や買い物が楽しめる観光施設・清水魚市場 河岸の市 いちば館との相乗効果も期待されている。

このため、山本理事長は「清水駅のフェリー乗り場はこれから人の流れの中心となるエリアだと思う」と期待を寄せ、「その中で駿河湾フェリーの持っている意味は非常に大きいと思っているので、民間の事業者とともにこの地区を一緒になって盛り上げていきたい」と話した。
一方、現在の経営体制に移行して以降、6年間でわずか1回しか黒字になっていない駿河湾フェリー。

県は経営の安定化に向けて新たに3億1000万円を補助する補正予算案を上程しているが、これ以上の追加支援は厳しい状況で、今まさに存亡を賭けた岐路に立たされている。
(テレビ静岡)