農業の担い手不足が課題となる中、鳥取県が長崎県と連携し、農繁期のズレを活用した外国人労働者のリレー雇用モデル事業を展開している。
カンボジア出身の特定技能保有者が、長崎での農作業経験を生かし、鳥取のナシやラッキョウ栽培で即戦力として活躍。年間を通じた雇用確保で農家と労働者双方にメリットがある一方、食事や住居確保などが課題として残されている。その現場を取材した。

「はかどります」農作業に慣れた手つき
鳥取市福部町のナシの選果場。農家に混じってナシの仕分け作業をしているのは、カンボジア出身の3人だ。9月初めから働き始めてまだ2週間足らずだが、すっかり慣れた手つきである。

「はかどります。一言伝えたら、ちゃんと仕事をわかってくれている」と生産者は評価する。
作業をしていたチャンボーラックさんも「簡単。楽しいです」と笑顔で話す。

農繁期のズレに着目した「リレー」雇用
3人は、鳥取県が2025年度から始めた農業の担い手確保に向けたモデル事業で長崎県からやってきた。ナシやラッキョウ、スイカなど鳥取県の主要作物の農繁期は、5月から10月にかけての夏場に集中する。

一方で、チャンボーラックさんたちが働く長崎県の主要作物は、イチゴやジャガイモ、ブロッコリーなどで11月から6月にかけてが農繁期だ。

県は、この2つの地域の農繁期のズレに着目。農繁期が終わった長崎からリレー式で農業経験のある「即戦力」の外国人労働者を受け入れ、夏場の人手不足解消を図ることにした。長崎県と連携し、派遣会社を通じて「特定技能」の在留資格を持つ外国人を受け入れている。移動や滞在の経費は、鳥取県が支援する。

「今年は長崎県でブロッコリーの選果をやっていました」とマタイさんは話す。
チャンボーラックさんたち3人は、4年以上日本に住み、2025年冬までは長崎県でブロッコリーやイチゴ、花などの選果や収穫の作業にあたっていた。

「上手、上手」ベテラン農家も手際の良さに感心
選果作業が一段落したあと、近くのナシ園に移動。今度は収穫を手伝う。

「上手、上手、上手だね。すぐ覚えてとても早い」と農家はその手際の良さに感心している。まさに「即戦力」である。

スレイトッチさんは「ちょっとつかれる。箱が重たいです」と言いながらも、マタイさんは「楽しいです」と笑顔で答える。
農家は「こっちにかかりっきりとか、ラッキョウにかかりっきりとかできないから、とりあえず教えたら飲み込みが早いので、彼女たちに任せたら間違いない」と評価する。

農家と働き手の"WIN-WN"の関係
砂丘で知られる鳥取市福部町では、特産のラッキョウとナシの両方を栽培している農家も多く、特に5月から9月にかけてはそれぞれの出荷の時期が重なる。
この農園でもラッキョウとナシの栽培を1人で切り盛りしていたが、経験のある外国人は心強い「助っ人」だ。

一方、働く外国人にとっても農繁期がずれることで年間を通じて働く場が確保されることになり、農家と働き手はお互いに"WIN-WIN(ウィン-ウィン)"の関係である。

鳥取県農林水産政策課の竹内崇課長補佐は「良かった点も難しい点もあることがわかった。最終的には農業が持続可能なものになり、労働力が確保できるようになれば」と話す。

効果と課題を検証して定着へ
鳥取県内ではこの3人も含めて東、中、西部で合わせて9人を受け入れている。県は2025年度、効果や課題を検証して受け入れ態勢を整備し、農業の担い手確保の手段のひとつとして定着させたい考えだ。

人手不足解消の切り札として期待されるこの取り組みだが、外国人労働者は様々な背景を持っていて、食事や宗教上の配慮の問題や住居の確保などの課題も見えている。鳥取県は今後、メリットとデメリットを見極めたいとしている。
(TSKさんいん中央テレビ)