コロナ禍を機に人手不足が、いまも続いているタクシー業界。そのタクシー業界がいま「或る世代」に人気を集めているという。業界に新しい風を吹き込んでいる或る世代とは。
10年前と比べると約50倍に増
福岡市に本社を置くラッキータクシー。点呼、朝礼で1日が始まる。県内でも最多クラスの従業員数を誇るラッキータクシーだが、或る世代がいま急増している。

点呼を終えたドライバーの1人は「いま22歳です。お客さんとの会話の中でやりがいを感じれて、転職してよかったなと思います」と話す。

また別の1人は「まだ今月1日から。20代がどんどん増えていってるので嬉しいですね」と話すなど20代の乗務員の人数が10年前と比べると約50倍に増えているのだ。

ラッキー自動車タクシー運営部部長の山下祐史さんは「私がこの事業部に15年前に来たときは、20代の方が1人いたかなっていうくらい。いまは50名を超してきたかなっていうくらいの人数が働いてもらっている」と話す。

現在、20代の乗務員は男女合わせて57人。福岡市全体でみても30歳未満のドライバーの数は2020年から5年間で3倍以上にあたる約300人まで増えているのだ。
「チップ1000円もらったことも」
若手ドライバーの1人、原井涼輔さん。29歳だ。教育関係の仕事から2024年の2月に転職した。

「運転が好きだったのもありますし、学生のときから英語が好きだったので、それが活かせる仕事が何かないかなと思ったときに、この仕事が良いのかなと思って」と転職理由を明かす。

外国人観光客が多い福岡県だからこそ、接客で英語が必要な機会が多いタクシーの乗務員を選んだ原井さん。業務に密着したこの日も「第2ターミナル?」とカタコトの日本語を話す観光客に対して「インターナショナル?OK、OK」と応じる。

「日本に来て言葉の壁って絶対あるので、そこのストレスは無くしてあげたい」と外国人の乗客と英語で会話を交わす原さん。スーツケースなどが乗せやすく、外国人の乗客が多いワゴン車を担当している。「こんなに日本に来て会話したタクシー運転手は初めてだよ、って言われてチップ1000円もらったこともある」と笑顔を見せる。

タクシーの乗務員になって約1年半。仕事の魅力はについて「やっぱり時間を自由に使えるっていうところ。何をするにも1人で、自己責任で、自由で」という。その日の状況に応じて勤務中の時間の使い方を自由に変えられる柔軟な働き方が魅力だというのだ。さらに大きく変わったことがある。収入だ。

「収入は大きく変わりました。10万前後は手取りが違う。こっちの方がいいです」。原井さんの場合、月収は前職の約25万円から約35万円に。

利用客が多くなる夜勤を選ぶとさらに給料がよくなるのだという。
普及がすすむ『配車アプリ』
しかし、歩合制のイメージも強いタクシー業界。なぜ始めて間もない運転手でも安定した収入を得られるのか?

それは、全国的にも普及がすすむ『配車アプリ』が大きな要因だ。

取材した日、原井さんは「きょうは、いまのところ11組。2件だけ、お手上げだけど(※流し)、あとはもう全部アプリ」と話す。配車アプリの普及により運転しながらタクシーを待つ人を探す、“流し”営業をしなくても確実に売り上げをあげることが可能なのだ。

配車アプリや得意の英語などを駆使して活躍する若手ドライバーの原井さん。今後の目標を尋ねると「まだまだコミュニケーションが甘い部分があるのでもうちょっと英語力をあげれるように些細なことでも話しかけるとかしていきたい」という。

さらに、タクシー乗務員を巡っては、運転に必要な第2種免許の取得条件が、2022年に免許保有3年以上から1年以上になるなど条件が緩和。2025年9月からは、取得するために必要な教習時間も短縮された。

20代が新たな風を吹き込み変わりつつあるタクシー運転手の世界。数年後にはさらに多くの若者が集まる職業になっているかもしれない。
(テレビ西日本)