各党の代表らが論戦を繰り広げる国会。自民党の新たな連立パートナーである日本維新の会が取り上げたのが『副首都構想』だ。

大規模災害などで、首都圏が麻痺した場合に備え行政機能を分散させ、また東京一極集中を是正し、新たな経済成長を促すことが目的とされているが、福岡からも熱い視線が注がれている。
福岡が東京に次ぐ「副首都」に?
今後の焦点として急浮上した副首都構想に福岡県の服部誠太郎知事も「福岡県が首都中枢機能のバックアップ拠点となる。その候補地になり得ると思っています」と会見で述べるなど福岡からの関心も高まっている。

福岡には、空港や鉄道といった充実した交通インフラがあり、首都直下地震による同時被災のリスクが低いことなどから「福岡も候補地になり得る」と服部知事はアピールしたのだ。

副首都構想は、吉村洋文・大阪府知事が代表を務める日本維新の会が自民党と交わした連立政権の合意書にも盛り込まれている。本格化した国会論戦の場でも早速、議題に上った。高市早苗首相は、副首都構想について「今後、連立政権合意書に基づき、早急に与党による協議体を設置」と答弁した。

吉村知事は、過去に維新の代表の立場から「大阪以外も副首都になりうる」との考えを示していて、その際、福岡の名前も挙げていた。災害大国の日本で、有事の際に中枢機能を守るには何が必要なのか。

福岡の街で市民に尋ねると「去年まで東京に勤めていて、今年から福岡に着任したけど、いい街ですし、コンパクトで、副首都は全然アリだと思います」(50代・男性)。

「自然災害と背中合わせが続いているから、それこそ福岡市はアジアの玄関窓口だから、いいんじゃない」(70代・男性)など概ね歓迎の声が聞かれた。

福岡市の高島宗一郎市長も「災害が起きた時には、ここを拠点にして、このような動きを取ろうということはみんな各企業、考えているように、国家としても当然、これは考えるべきことであって、大いに議論が盛り上がることを期待しています」と会見で述べた。

災害時のバックアップ機能として福岡市は適地だという認識なのだ。
「重要業務は災害時こそ動くように」
実際に災害時のリスクヘッジとして福岡に本社機能の一部を移した企業がある。

首都圏での大規模な災害に備え2023年に福岡市天神に新たな拠点を開設した『エヌエヌ生命保険』。中小企業向けの法人保険を取り扱う会社だ。

当初は、システム管理を担うIT部門だけでスタートしたが、2年かけて顧客対応から保険金の支払いまで重要な業務は一貫して行える体制を整えた。オフィスが入る天神ビジネスセンターは耐震構造に優れ、緊急事態の際も事業が継続できるよう備えられている点もこの場所を選んだ理由のひとつという。

『エヌエヌ生命保険』テクノロジー基盤部の柴田雅人さんは「災害が起こった有事の際に、我々保険会社として、何をお客様にタイムリーに提供するかという保険本来の趣旨に立ち止まって考えると、重要業務は災害の時こそ動くようにしておかないといけない」と移転の重要性を話す。

さらに、行政などの外国人向け窓口が充実していると外国籍のスタッフからの評価も高い。

インドネシア出身のクスマ・アンドレさんも「福岡市は、確かに住みやすいと思っている。契約書の手続きとかいろんな部分で生活もいい」と話す。
最大1万人移動させ業務を行う
災害時のバックアップ機能として副首都には求められる機能とは何なのか。政府が2013年にまとめた報告書によると、大規模災害で国の中枢機能の継続が困難になった場合、代替拠点に各省庁の職員らを最大1万人移動させ、業務を行うと想定している。

防災工学が専門の九州大学土木工学科の塚原健一教授は「住むところ、執務機能、それと通信インフラ。一定期間にしろ、国会なり政府の機能が来るわけだから、全国との交通手段の確保というのがきちんと備わっているかというのが、バックアップの候補地の基本的な考え方」と話すが、なかでも1万人を受け入れられる住まいの重要性を強調する。

ホテルや空き家などを県内での災害時のために避難者の受け入れ先として確保、整備しておけば、首都機能が止まった時にそのまま代替拠点として使えると指摘しているのだ。

副首都構想はどこまで現実味を帯びていくのか。災害と隣り合わせの日本で備えをどう形にしていくのかが問われている。
(テレビ西日本)
