ちょっと珍しい店です。長野県飯綱町に移住した夫婦が7月に「パン」と「本」を販売する店をオープンしました。夫が焼いたパン、妻が厳選した本、「町の日常に溶け込むような店にしたい」と意気込んでいます。

焼きたてのパン。いわゆる「ハード系」が並びます。その傍らには絵本やアートなどさまざまなジャンルの本が。

パン屋と本屋をかけ合わせた珍しい形態の店。飯綱町に7月にオープンしたばかりの「朝と夕」です。地元住民を中心に早くも人気となっています。

住民:
「田舎なので、新しくお店ができてもらってうれしいです」

営むのは、「パン担当」の入口慎平さん(43)と「本担当」の梓さん(42)の夫婦。

パン担当・入口慎平さん:
「日常にマッチするようなものを作り続けていきたい」

本担当・入口梓さん:
「小さな店で、大儲けできるような仕事でもないんですけど、『小さな渦巻』を起こしていけたらいいかな」

大阪府出身の慎平さんと山口県出身の梓さんは大阪の大学で出会い結婚。2017年、慎平さんの仕事の関係で、軽井沢に移住しました。

もともと本が好きだった梓さんですが、当時、軽井沢に書店がありませんでした。

入口梓さん:
「本屋さんがないって、結構、生活が変わるなと気付くタイミングがあって、ないなら自分でやりたいな」

2018年、梓さんは北軽井沢の施設で本の委託販売の仕事を始めます。ちょうどその頃、慎平さんも大好きだったパン作りを学ぼうと、上田市の店で2年間修業していました。

そして、2020年、飯綱町に移住したことをきっかけに2人の店を出そうと決意しました。

入口梓さん:
「本当に、たまたまパン焼けたので、じゃあ一緒に見たいな。両方すごく日常にあって、暮らしのそばにあってほしいものかなと思うので、組み合わせはすごくいいような気がしますね」

慎平さんが作るパン。上田市産の小麦粉などを使い素材にこだわっています。

入口慎平さん:
「口に入るもの、体をつくるものなので、生産者が見えるとか、作り手が見えるということを気にしながらやっています」

週4日の営業で、定番からその日の「きまぐれメニュー」まで約10種類を販売。いわゆる「ハード系」のパンがメインです。

(リポート)
「しっかりとかみ応えがありますね。かめばかむほど、シンプルな味ではあるんですけど、小麦本来のうま味が出てくる感じがします」

オープンから約2カ月。早くも地元住民などから評判となっています。

客:
「彼をオープン前から知っているもんで、開いたっていう話になって」
「うちは娘夫婦がドイツなので、ちょうど似ているんです。黒パンみたいなのが」

客:
「子どもが大好きです。ただの菓子をあげるよりは、こういうものの方がおやつとしてはいいのかな」

さて、書店のコーナーには、梓さんが厳選した絵本や、言葉、アートなどさまざまなジャンルの約200冊を並べています。

入口梓さん:
「紙で触って楽しめるというのも結構、意識している。一生売れ残っても悔いはないというか、老後には自分が読みます、という本を選んでいる」

飯綱町にも書店がなかったため、住民から重宝されているということです。

少し変わった店の名前「朝と夕」は、茨木のり子さんの詩「小さな渦巻」から取りました。真摯な仕事は思いがけないところで「小さな渦巻」となって誰かに影響するという内容です。

入口梓さん:
「このお店も、日常に溶け込むようなお店になればいいなと思って、『朝と夕』という言葉をつけた。お店を始めてからすごくたくさんの人に助けていただいて、この詩の書いてあることを実感している日々です」

移住してきた夫婦が飯綱町に開いたパンと本を販売する店。地元に溶け込み「小さな渦巻」が起こる店を目指します。

入口梓さん:
「棚を見て、世界が広がるというか、いい時間を過ごしてもらえたら」

入口慎平さん:
「日常に食べていただける食事パンというのを中心に作っていきたい」

長野放送
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