金曜日の夜、関西空港に航空機が緊急着陸。一体、何があったのか?
乗客の証言、そしてパイロット経験者への独自取材で迫ります。
■ユナイテッド航空機が関西空港に緊急着陸 乗客に緊迫の当時を取材
「こっち来てくださーい!」
緊迫する現場…。
先週金曜日、成田発フィリピン・セブ行きのユナイテッド航空機が関西空港に緊急着陸。
【乗客】「機内食配られたんですけど、急に『大阪に変わる』と言われて、機内食回収されて」
【乗客】「いきなり『GET OUT!』『GET OUT!』ってスライダー出して、それでみんな滑って」
飛行中に貨物室で火災の発生を示す表示が出たということですが、15日、調査官は…。
【航空事故調査官】「後方の貨物室に燃焼の痕跡は見られませんでした」
火災検知システムが“誤作動”の可能性も!?当時の機内の様子、“緊急着陸”の判断とは?
パイロット経験者などへの取材で迫ります。
■配られた機内食は回収 乗客が語る緊急脱出の様子
「乗客の方、消防隊の指示に従ってください」
飛行機から急いで避難する乗客。
「こっちきてくださーい」
9月12日、成田発フィリピン・セブ行きのユナイテッド航空32便が関西空港に緊急着陸。
乗客、乗員あわせて142人が緊急脱出しましたが、乗客5人が打撲などの軽いけがをしました。
【乗客】「『急に関空に着陸します』となって、機内食配られたんですけど『急に大阪に変わるんで機内食回収します』と言われて」
【乗客】「いきなり後ろも前も、『GET OUT!』 みたいな。(脱出用の)スライダー出して、それでみんな滑って」
■緊急着陸から7時間以上 滑走路は封鎖で9便に影響
緊急着陸した理由、それは…貨物室で火災示す警告表示。
国交省などによると、機体は午後5時42分ごろに成田空港を離陸。
太平洋の上空を南西に飛行していましたが、午後6時半ごろ、突然、機内の貨物室で出火したことを示す警告が表示。
その後、進路を北に変え‥午後7時8分、関西空港に緊急着陸したのです。
【記者リポート】「緊急着陸から4時間以上が経ちましたが、機体はこの先にある誘導路上に止まったままとなっています」
緊急着陸からおよそ7時間後に機体がけん引されるまで滑走路は封鎖。
それにより…
【別機体のアナウンス】「現在関西空港で2本とも滑走路が閉鎖されている状況であります。当機は成田空港へ引き返すことを決定いたしました」
別の機体が関西空港に着陸できず、引き返すなどあわせて9便に影響が出ました。
■なぜすぐに避難させなかった? 「プロとしてお粗末」と元パイロット
国の運輸安全委員会は、重大な事故につながる恐れがある「重大インシデント」として調査を開始していますが…一体、飛行機の中で何が起きていたのか?
「newsランナー」は複数の乗客を取材。浮かびあがってきたのはある“違和感”でした。
【乗客】「着陸してから15分ぐらいたって、機長が急に『出てください』と、そこから脱出用のシューターで降りた」
(Q.(機内で)待つ時間があった?)
【乗客】「席に座って、機長からの指示を待つ時間もあった。急に『脱出してください』という感じで、一斉に脱出した」
まず、乗客が証言したのは着陸から脱出までの時間。
航空機は午後7時8分に緊急着陸しましたが、その後、脱出用のシューターで避難が始まったのは、午後7時29分。着陸から20分以上たっていたのです。
なぜすぐに避難を開始しなかったのか…?
この判断について、元パイロットで航空評論家の杉江弘さんは…。
【元パイロット杉江弘さん】「パイロットが緊急脱出する状況か確認していた。それでこれだけ時間がかかった。でもそれは誘導路からゲートまで走りながらでもできる。やっていることはプロとしてお粗末」
■緊急着陸の理由は“火災” 「違和感なかった」と乗客
さらに、緊急着陸の理由は、「火災を示す警告」が表示されたことでしたが…。
(Q.乗っていて違和感は?)
【乗客】「僕は感じなかったです。なんで緊急着陸するのかなって感じでした」
(Q.機内で焦げ臭いとかは?)
【乗客】「ないです」
取材の中で、煙や炎を見た人はいませんでした。
実際に火災は起きていたのか。
調査を行う運輸安全委員会は15日…。
【運輸安全委員会事務局 高橋充航空事故調査官】「後方の貨物室には、燃焼の痕跡は確認されませんでした」
(Q.誤作動の可能性とか?)
【運輸安全委員会事務局・高橋充航空事故調査官】「そちらの可能性もあります。インジケーター(指示器)の誤作動の可能性を含めて、FDR(フライトレコーダ)のデータと整合するように調べていきます」
検知システムが“誤って作動した”恐れもあるとの見解を示しました。
■火災が起きたかどうかはセンサーの警告頼り 誤作動でも緊急着陸行う
そもそも「火災を示す警告」とはどのようなものなのか。
今回の機体と同じ操縦室のシミュレーターを置いている神戸フライトシミュレーターセンターテクノバードを訪ねました。
(Q.今は何を?)
【機長の資格を持つ井ノ口彰規さん】「これは火災または煙を検知したことを表示します。これがカーゴ(貨物室)の火災の検知システム。アフター、後ろの貨物室の煙を検知したということになります」
火や煙を検知すると、警告音とともに赤く光るランプ。
フライト中は、貨物室に入れず直接確認することができないため、火災が起きたかの判断はこれらの警告に頼ることになります。
(Q.誤作動あることも?)
【機長の資格を持つ井ノ口彰規さん】「可能性としてはありえますね。仮に誤作動だとしても、安全確保するためにアクションは起こす」
誤作動の可能性があっても、基本的には、最寄りの空港への緊急着陸がおこなわれるといいます。
■センサーの誤作動はセンサーを増やす等の対策が必要
誤作動を防ぐ対策はあるのか?
現役時代、“誤作動”に直面したことがある、杉江さんはこう話します。
【元パイロット 杉江弘さん】「火災警報のトラブルは、しばしばあるんですよ。対策としてはセンサーを2つにするとか、安全対策を強化するなら、センサーをマルチにするということが必要だと思う」
「重大インシデント」に認定された今回のトラブル。
“誤作動”の可能性も含め、再発防止に向けた検証が待たれます。
(関西テレビ「newsランナー」2025年9月15日放送)