珠洲市で昔から愛されている太鼓饅頭。
今回紹介するのはこのまんじゅうが名物の一軒の和菓子店です。

(稲垣)
「珠洲市飯田町に来ています。こちらにありますのは、創業およそ120年の老舗の和菓子店です。地震を機に店主は一度は廃業を決意しました。しかし、1年7ヶ月、経ち、見事復活を果たします。店の再開にかける店主の思いを伺います」

珠洲市飯田町の和菓子店多間栄開堂は、能登半島地震の被害を乗り越え、7月30日に営業を再開しました。

(稲垣)
「お久しぶりです」
(多間淳子さん)
「ありがとうございます。ようやくようやく開店することができました」
(稲垣)
「いい香りがしますけど…」
(多間淳子さん)
「今、主人が太鼓まんじゅうを焼いてますので、よかったらどうぞ」
(稲垣)
「いいですか?ちょっと失礼しますね…」

創業120年を超える老舗の多間栄開堂。看板商品が「太鼓饅頭」です。日常のお菓子としても人気ですが、祝い事があるとこの饅頭を配る風習が残っています。
(客)
「いま建前(上棟式)しとるげん」
(多間淳子さん)
「おめでとうございます」
(客)
「それで大工さんに…めでたい時にはせめてめでたく(太鼓饅頭を)…」

3代目店主の多間俊夫さんと妻の淳子さんが店を切り盛りしています。

(稲垣)
「あっという間にもう1年7カ月経ちましたね。ここまでの道のりは、お二人にとって振り返ってみるとどうですか短かったですか、長かったですか?」
(多間俊夫さん)
「私は内灘に避難している時が長く感じました」
(稲垣)
「珠洲に戻って来られて再開してからは…」
(多間俊夫さん)
「早かったね」
(多間淳子さん)
「早かった、あっという間でした。あっという間です。毎日毎日がすごく充実していて、お店を建てることを決めた時点から何にもないところに来て見ては『ここに建つんだ』と思いながら…」

去年元日の地震発生から5日後、娘婿の山岸千太郎さんが石川テレビの取材に答えていました。

(山岸千太郎さん)
「ひどいです。ひどいっていうか、本当に悲しいですよ…他にもう、言葉ないですよ」

(稲垣)
「そんな中で、お店を辞めようと思ったこともあったんじゃないですか」
(多間俊夫さん)
「最初、地震の後に(店を)見たら、『これは再起できないなと思いました」
(多間淳子さん)
「めちゃくちゃでしたからね…だから、どうしよう、どうなるのかなって…本当に先なんて全然考えられないし、見えないし…」
(稲垣)
「どのタイミングで、どういったことがきっかけでここをもう一回やってみようと思われたんですか」
(多間俊夫さん)
「息子がやっぱり(自分を)見ていて『ダメだな』と思ったらしいんです」
(多間淳子さん)
「内灘に避難していた時、主人は全然元気なかったですから。子どもたちも一生懸命になってくれて、『何とかお父さんお母さんもう一回店やってみんけ』って言われて…」

避難先で自分を失いかけていたという利夫さん。その様子を見かねた子ども達は、店の再開を進めました。クラウドファンディングを活用するなどの支援を得て、再開に向け準備を進めました。

営業再開を10日後に控えたこの日は、飯田町の夏祭り、燈籠山祭りが行われていました。

多間さんはお店で赤飯を炊き、お祝いの準備に取り掛かっていました。

一基の山車が、店の前で止まりました。若い衆から祝いの木遣り、「きゃーらげ」が歌われました。

(多間淳子さん)
「胸に詰まるものがありましたね。みんな若い人が本当に嬉しそうな顔をして『多間さん、本当に良かった、お店を再開してくれて。本当に僕らも嬉しくて…』と言ってくださって…みんな知ってる方ばっかりですから、本当に何だかジンときましたね」

店が再開し、太鼓饅頭が再び店先に並びました。

(多間俊夫さん)
「カステラの生地なんです」
(稲垣)
「カステラ生地なんですか?」
(多間俊夫さん)
「これが、ものすごく売れるんです」
(多間淳子さん)
「老若男女問わず、昔は年配の方がお好きでしたけど、今は若い方でも食べていただけますから…」
(稲垣)
「これは珠洲のどんなお菓子になるんですか?」
(多間俊夫さん)
「冠婚葬祭のお菓子なんです」

この焼き台は震災の被害を逃れ、奇跡的に無事だったものです。

(多間淳子さん)
「『私と主人にもう一回太鼓饅頭を焼いてほしい』と言ってるのかなと思いましたね」
(稲垣)
「あら、できたて!あったかい。なかなかできたてをすぐ頂けるのってないですよね、嬉しいわ…美味しい!わふわふわの生地の中に柔らかく優しいあんこが入っていて…しかもこれ、出来立てということもあって、ちょっと一番外側がカリッとしている。この優しさが、何だかお二人の人柄を表しているような感じがしますよね」
(多間淳子さん)
「ありがとうございます」
(稲垣)
「この後、こちらのお店をどんな感じで続けていきたいと思っていますか?」
(多間俊夫さん)
「お客さんが来て、休憩しながら(安らいで)くれればいいなと思います」
(多間淳子さん)
「お店は狭いんですけれど、今は隣近所の家もなくなりましたし、お客さんがなかなか顔を合わせることが少ないので…仮設は仮設で皆さん行ったり来たりしてても、やっぱり外で会うってことはあまりないですから、もしここが、また皆さんが寄ってお話できる場になればいいかなと思って、そこでおいしいお菓子を食べて、お饅頭を食べて、お茶飲んで話して頂けたらいいかなと思ってます」
(稲垣)
「これからも末永く頑張ってください」
(二人)
「ありがとうございます」

石川テレビ
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