国内のみならず海外でもブームとなっている抹茶。しかし、その裏で静岡県内の茶業界は苦境が続いていて今まさに転換を迫られています。
スイーツにドリンク、さらには調味料。
様々な物に使われる抹茶。
その人気はいまや国内だけにとどまらず…
スロベニアから来た女性:
ここ最近2年間は人気があると思う。インフルエンサーがインスタやフェイスブックなどで宣伝している。スロべニアでもかなりのブーム
スロベニアから来た男性:
健康的なライフスタイルだと思う
ペルーから来た女性:
抹茶ラテは今までペルーで一般的ではなく、これまでとは違った味わいを楽しむことが出来る。日本を訪れてから抹茶が大好き
アメリカから来た男性:
抹茶は大好き。抹茶には多くの良さがある。1つはお茶やコーヒーから摂取するカフェインと比較して新陳代謝を促進し、胃に優しい。多くの抗酸化成分を含んでいる
最近では抹茶に含まれるカテキンやビタミンCといった栄養素に加え、手軽に“日本らしさ”が感じられるとあって海外でも抹茶ブームに火が付いています。
農林水産省によると、2024年のお茶の輸出額は364億円と過去最高を記録。
そのうち75%にあたる272億円が抹茶などの粉末状のお茶となっています。
その一方で、日本人にとって最もなじみ深いいわゆる煎茶は生産量・単価ともに低迷。
過去15年で約2万6000戸もの茶農家が廃業しました。
そんな茶業界が転換を迫られる中で迎えた空前の抹茶ブーム。
茶どころ静岡の今をヒモトクと…
掛川市にある丸山製茶。
丸山製茶・丸山昌侑 執行役員:
生産者が作った抹茶の原料である碾茶を弊社が買い取って、こちらの工場で粉砕して抹茶にしている
2025年5月には抹茶需要の高まりに応えるべく、粉砕機6台を揃えた抹茶専用の工場を新設しました。
これにより、今までは1日に3000kgだった抹茶の製造が一気に8000kgに。
このように抹茶を作るためには専用の機械を導入することが不可欠ですが、そもそも抹茶の原料となる碾茶と煎茶とでは栽培方法に大きな違いがあるといいます。
丸山製茶アグリ事業部・萩原将道 部長:
お茶時期に向けて茶葉に被覆という作業をしている。日光を遮ってお茶の中の色と味を良くしている
被覆栽培と呼ばれるこの方法の特徴は手間の多さ。
抹茶の品質を大きく左右する気温や日照時間を見極める必要があるからです。
丸山製茶アグリ事業部・萩原将道 部長:
やはり大変なのはこういった形で作業をするので人手がかかることなど、労力的な部分が大変なことが1つ。あとは日光を遮るのでお茶の木に少しストレスがかかり、ここからお茶の木を回復させることが課題の1つ
それでも碾茶の生産量を毎年増やしていて、そのワケをたずねると…
丸山製茶・丸山昌侑 執行役員:
海外国内限らず抹茶のお問合せや意見をもらう機会が非常に増えた。需要に応えるため、いま弊社も増産している。(輸出量は)年々順調に増えていて、数量ベースで言うと昨年対比でも150%。今まで引き合いがなかった国からも引き合いが来るようになっている。徐々に増えていると思う
一方、こちらは創業100年あまりの富士宮市にあるヤマサン渡辺製茶。
オーストラリアでジェラート店を構える知人からの要望もあり、静岡のおいしいお茶を海外の人にも知ってもらおうと5年前から抹茶を手がけていますが、悩みの種となっているのが人手不足。
ヤマサン渡辺製茶・渡邊勝彦さん:
非常に苦労している。うちは家族4人で祖父母も一緒にみんなでたくさんの被覆をしている
さらに…
ヤマサン渡辺製茶・渡邊勝彦さん:
抹茶は緑茶の機械では作れないので委託加工をしている。どうしても加工賃というものが発生するので、結構な単価はする
渡辺製茶が元々扱っていたのは煎茶だけ。
このため、自社だけで抹茶の製造を完結できない反面、専用の機械を導入するためには膨大な費用がかかり、経営への影響を考えると踏ん切りがつきません。
また、期待されている海外輸出についても…
ヤマサン渡辺製茶・渡邊勝彦さん:
(海外輸出に)興味はあるがなかなかハードルが高い。抹茶ブームの中、投資をして採算がとれるか、どこの農家も悩んでいるのではないかと思う
県内には碾茶の生産へと切り替える農家に補助金を出すなど、茶業の転換に向けた取り組みを進めている自治体もありますが、高齢化や後継者不足といった課題も山積みです。
ヤマサン渡辺製茶・渡邊勝彦さん:
碾茶をやりたい人は多くいるがなかなかハードルが高く、もう少し個人が入りやすい状況を県や国が考えてくれたらと思う
製品として仕上げる前の荒茶の年間生産量のみならず、2025年度の一番茶における荒茶生産量についても統計開始以来、初めて首位の座を明け渡した静岡県。
いま、まさに踏ん張りどころに差し掛かっています。