石破首相の電撃辞任で火ぶたが切られた自民党総裁選挙。
複数の議員の立候補が取りざたされる中、有力とみられるのは小泉進次郎氏と高市早苗氏だ。
総理を目指すうえでの「強み」と「弱み」を政治ジャーナリスト・青山和弘さんの独自取材で解説する。

■小泉氏の強みは「突破力」 高市氏の強みは「保守」
まず最有力候補の「強み」と「弱み」について青山さんの分析はこうだ。
小泉進次郎農水相の「強み」
・突破力、議員の支持
小泉進次郎農水相の「弱み」
・経験、うっかり発言
高市早苗前経済安保相の「強み」
・政策力、保守層の支持
高市早苗前経済安保相の「弱み」
・党内融和、他党との連携
青山和弘さん:まず小泉さんですが、強みは米の価格高騰問題の時、(農水相として)随意契約に踏み切ったような、やはり突破力です。動きが早いですし、こういう力は党内でも随一と言っていいぐらいの力がある。さらに、小泉さんは国会議員の中で最大公約数になりやすい。人気があり、『ナイスガイ』だという人が多い。そういう意味で、議員の支持を集めやすい。
一方で高市さんは、政務調査会長という党の政策責任者を務めた、政策力があること。
さらに、自民党の中でも、特に例えば積極財政であるとか、保守的な政策ですね、夫婦別姓反対とか、保守層の支持が非常に強いところがやはり強み。

■小泉氏の弱みは「うっかり発言」 高市氏の弱みは「融和・連携」
青山和弘さん:弱みは、小泉さんは経験不足が、前の総裁選でも明らかになった。
さらに“うっかり発言”。
やさしい言葉を使って発言するが、『えっ!?』というような、『質問に答えてないんじゃない?』みたいな発言など、少し軽はずみな発言が目立つところがあります。
一方で高市さんは、『党内融和』、『他党との連携』。
似たような「弱み」ですが、どうしても高市さんは右にエッジが立ってる政策が強いだけに、党内には敵が意外と多い。そして野党のみならず、公明党との連携に関しても、不安視する声があります。高市さんが安心感を党内、そして他党にも与えられないと、前回の総裁選と同じようなことになりかねない状況。

■経験不足で前回は3位の小泉氏 農水相経験で「進化」
その上で、青山さんは「前回総裁選からの進化が勝敗を分ける」と話す。
青山和弘さん:小泉さんが去年と違うのは、農水大臣を新たに経験して、米政策で一定の実績を残したということ。あと今回の石破首相の退任に関して、鈴をつける役割を果たしたというところもある。
ただ一方で、例えば外交の発言で、(前回の総裁選の時の討論会で)上川前外相の質問に、“とんちんかん”と言っていい発言があったが、外交や経済政策などにはまだ携わってないので、一定の経験不足は変わってないとも言えると思います。
青木源太キャスター:『私自身が完璧じゃなくても、周りに仲間がいるチームがいるんだ』と前回の総裁選でも言ってました。
青山和弘さん:国会議員の間では仲間の多い小泉さんですが、ただ前回は準備不足だった。今回は総裁選に出馬する人も前回よりは少ないですし、もうちょっとチームをがっちり固めて、政策も表現をこなれたものにしていけば、もっといい政治ができる可能性はある。
だから小泉さんは出馬表明するのを、慎重になっているんだと思う。出馬表明した時には、『何やるんですか』って聞かれますので、前回の失敗を繰り返さないためには、出馬表明の時点でちゃんと答えられるよう準備することが、何よりも大事。
青山和弘さん:岸田・石破政権の政策から大きく転換するのであれば、高市さん。積極財政論者ですし、保守的な政策の主張が強いですから、そういう意味では変わった感は出る可能性ある。
小泉さんの方が、どちらかと言えば今までの流れに近いところがある。ただ若さだとか、突破力という意味では、小泉さんもこの1年間、米問題以外でも存在感を示してきたので、岸田・石破政権よりは改革路線という意味では、小泉さんの方が強いともいえる。

■小泉米改革で党員票は減る?
関西テレビ神崎博報道デスクは、小泉氏の米政策が与える総裁選への影響について指摘する。
関西テレビ 神崎博報道デスク:小泉さんは選挙の顔になりうると思う。ただ一方で、前回の総裁選の時、小泉さんは議員票は1番多かったのですが、党員票はあまり集まりませんでした。そういう意味において党員票をどれだけ取れるか。
一方、高市さんは前回の総裁選で党員票がかなり多く集まった。
小泉さんの出馬でひとつ気になるのは、農水相として行った米改革に対し地方の自民党員からどう思われているかということ。今後の米政策をどうするかというところとかなり関連してくるので、党員票をどこまで小泉さんがどこまで集められるかが、ひとつの鍵になる。
青木源太キャスター:そういった意味では、フルスペック型(国会議員と党員党友の投票)になった意味は大きいかもしれないですね。
青山和弘さん:そうですね。フルスペック型であるからこそ、高市さんがかなり有力になってきてる部分もある。やはり党員票が取れるから。
ただ前回は、石破さんと高市さんと小泉さんで、三つ巴の戦いと言われた。今回はその中から石破さんが抜ける。その石破さんを支持した党員票が、今回どこへ行くのかを考えると、やはり小泉さんの方に乗りやすいだろうと。石破さんの考えに近いのは小泉さんなので。
となると小泉さんが党員票で高市さんを逆転する可能性もあるかもしれない。このあたりは、政策の打ち出し方や討論会で失敗しないかどうかによって変わってくる可能性があると思います。

■過半数を持たない自民党総裁に問われる資質
一方、高市氏については「政策力」、「保守層の支持」という「強み」が逆に「弱み」になっていると指摘します。
青山和弘さん:今回の参議院選挙で自民党が負けたのは、自民党を支持していた保守層が自民党どうかな』、『石破政権どうかな』と思って参政党や、国民民主党にも流れた。だとすれば高市さんにして、『保守を取り返そう』『高市さんがいいんじゃないか』という声も一定数あります。
一方で前回の総裁選と違うのは、自民・公明が国会で過半数を持っていないこと。
他党と協力することを視野に入れた総裁じゃないと、臨時国会で立ちいかなくなる。
そういう意味では、『進次郎さんの方が野党と話しやすいのでは』という声もあり、どちらを重視するかによっても変わってきます。
(Q.参政党や国民民主党なら高市さんの方が近いのでは?)
青山和弘さん:国民民主党とか参政党なら高市さんだと思いますが、例えば日本維新の会とか、立憲民主党なら小泉さんの方が近い。だからどういう党と、どういう連携をしていくかによって、どちらが適してるかということも変わってくる。
(Q.どちらになるか分からない?)
青山和弘さん:分からないですね。現状では色々な見方がありますが、党員票では高市さんが今のところ一日の長があると思う。でも議員票では、小泉さんの人気が高い。

■麻生元首相 前回は高市氏支持も今回は...
自民党内の実力者がどちらを支持するのかも注目される。
青山和弘さん:菅さんに関しては、間違いなく小泉さんだと思う。同じ神奈川県連ですし、今回も石破さんの説得に2人で行っているぐらい仲がいい。
一方で麻生さんは前回、石破・高市の決選投票では、『麻生派はみんな高市に行け』と言って、高市さんに乗った。結局は勝てなかったんですが、そういった考えが今回もあるのかどうかですが、周辺によると、麻生さんは『今回は小泉さんでいいんじゃないか』ということを示唆しているようです。
そうなると議員票では圧倒的に小泉さんが勝ってくる可能性が出てきます。
青木源太キャスター:麻生派が一気に動いたら、かなり大きいですね。
青山和弘さん:大きいと思います。ただ、これからどういう流れになるか、まだ分からない所あります。現状では野党との交渉を考えると、『小泉さんがいいんじゃないか』と示唆してるようですから、そうであると議員票が、かなり小泉さんに流れる可能性が高いので、高市さんが党員票で大差で小泉さんを引き離さないと難しいかもしれない。
(Q.菅さんは元気?)
青山和弘さん:やはり見ての通りだと思います。まだはっきり言葉もしゃべれますが、どうしても動きがスローですし、時々、言葉に詰まったりもされる。そういう意味では、元気で昔のようにやっているのは麻生さんと岸田さん。この2人の影響力が大きいと言っていいと思います。

■自民党総裁選への出馬表明はいつ?
自民党総裁選最有力と言われる高市氏、小泉氏。出馬表明はいつになるのだろうか。
青山さんの取材によると「この2人はじっくりと政策を練って慎重になっている」そうだ。
青山和弘さん:この2人は、はっきり言うと焦る必要が全くない。もう前回の実績もありますし、知名度もあります。知名度が低かったり、人気のない人は早く表明して、どんどん露出していきたいんですが、この2人は逆にじっくりと政策を練って、間違いがないようにするという意味で、慎重になってるということだと思います。
(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」2025年9月9日放送)
