2023年秋に池田町と岐阜県とをつなぐ冠山峠道路が開通し、池田町を訪れる観光客が一気に増えました。この活況を起爆剤に町の観光を飛躍させようと、開業から10年を迎えた第三セクターのまちづくり会社では、次の10年に向けた新たな取り組みを始めています。
◆開業から10年、類似施設が台頭
ワイヤーにつり下がって森の上空を滑り降りるメガジップラインが目玉の「ツリーピクニックアドベンチャーいけだ」は、自然を生かしたアドベンチャーパークとして2016年に全国に先駆けてオープンし、10年目を迎えました。
運営するのは、池田町の第三セクター「まちUPいけだ」です。施設立ち上げから携わったゼネラルマネージャー(GM)の山田高裕さんは、この10年で施設を取り巻く環境は大きく変わったと話します。「10年前は、ジップラインやアドベンチャーパークの装置を中心に客に喜んでもらっていたが、10年経って競合や類似施設ができ、他でも同様の体験ができてしまう状況になっている」
◆“スキル”あるスタッフの獲得
そんな中で力を入れているのが、学生インターンです。2025年のお盆の繁忙期には5人が参加。全員、東京にある自然や環境について学ぶ専門学校に通う学生たちです。
東京都出身の三瓶英太郎さんもその一人で、2026年春からまちUPいけだで働きたいと考えています。「僕が一番に感じたのが、ここの自然が豊かさ。自然のことをあまり知らない客も多いので自然の良さを伝えられるのにやりがいを感じている」
GMの山田さんは採用について「これまでも働きたいと言ってくれるスタッフを心から歓迎して採用していたが、今後はさらに、自然のことを楽しく伝えられるスキルを身につけたスタッフを仲間に入れることで、そのノウハウやレベルを上げ、客に喜んでもらえるようにしていきたい」と話します。
◆不足する宿泊施設も整備
池田町では近年、道路や道の駅の開業が相次いでいます。2023年11月には、岐阜県と池田町をつなぐ冠山峠道路が開通。2024年春には冠山峠道路につながる国道417号に観光交流施設「道のオアシス フォーシーズンテラス」もオープンしました。
これを機に池田町を訪れる人の数は一気に増えた一方で、受け皿となる宿泊施設が少ないことが課題の一つでした。
そこで、まちUPいけだは町内で社員寮として使っていた建物を宿泊施設にリノベーションしました。山田GMは「薪ストーブを使ってたき火をしたり料理を作ったりしながら、寒い冬でも温かくして過ごせるようになっている。まちUPいけだの事業はいかにして森林資源を有効に使い多くの人に触れてもらうかが大きなミッションなので、薪として使う以外にも、この部屋の内装にも木を使いDIYでリフォームしている」と話します。
この宿泊施設は「道のオアシス」の裏手に整備。この場所にも、こだわりがありました。「国道417と道のオアシスがあり、ふれあい橋という吊り橋を渡るとこのエリアにつながるので、場所としてはこれ以上いい場所はない。常に子供たちの遊び声が聞こえる場所なので、滞在するファミリーも安心して過ごしてもらえるのではないか」(山田GM)
この一棟を皮切りに、同じ川沿いに滞在型の施設を増やしていく計画です。
◆ホスピタリティ磨き上げ次の10年へ
池田町にツリーピクニックアドベンチャーがオープンして10年。この間、まちUPいけだでは、今回の宿泊拠点の他にも森林資源の活用をテーマに施設整備を進めてきましたが、この先を見据えて重要と捉えるのは“人の育成”です。
「川も山などの自然は日本全国どこにでもあるが、それを“いいな”と思ってもらうのに必要なのは人の力だと思うので、案内するスタッフのホスピタリティのレベルや力を磨いていき『やっぱり池田町に行きたいと』言ってもらえるようにしたい」(山田GM)
池田町の交流人口アップ、滞在時間アップに向けて、まちUPいけだによるまちづくりが新たなステージに突入しています。