昭和初期の建築様式を今に伝える鹿児島県教育会館が、8月下旬、民間業者に売却され、解体されることが決まった。跡地には新築の分譲マンションが建てられる予定だ。

戦前に完成 老朽化進み売却、解体へ

鹿児島市山下町にある鹿児島県教育会館は地下1階、地上3階の鉄筋コンクリート建てで戦前の1931年(昭和6年)に完成した。

建物を所有する県教育会館維持財団によると、戦時中の空襲でも倒壊を免れ、昭和初期の建築様式を今に伝える貴重な建物となっている。一方で老朽化が進み、財団は建物の維持活用を条件に売却先を探していた。

しかし、条件を満たす売却先が見つからず、全国で新築マンションの分譲などを手がけ、東京に本社を置く「フージャースコーポレーション」に譲渡を決定、建物は8月29日引き渡され、9月から解体される予定。跡地には分譲マンションの建設が予定されている。

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戦火に耐えた94年 歴史ある建物の一部は保存予定

完成から90年以上を経過した建物は、内部にも昭和初期の趣が感じられる装飾が随所に施されている。

建物は解体されるが、フージャースは県教育会館の歴史を後世に引き継ぐため、建物の部材の一部を保存することにしている。住民に限らず誰でも見られるように、国道10号沿いに展示スペースを設置する予定だ。

昭和初期の趣が感じられる建物内部
昭和初期の趣が感じられる建物内部

県教育会館維持財団の原園正敏常務理事は「おそらくこの建物は焼夷弾で戦時中に内部は焼けているが、金属製なので鉄柱は完成当時(1931年)から残っている物だと思う。よく残ったと感じる」と話し、「私たちがここを離れること、この建物がなくなることは寂しいが、ここに県教育会館が94年間存在した歴史は残るようなので楽しみにしている」と、建物の一部を保存する今後の計画に期待していた。

戦火に耐えた金属製の鉄柱
戦火に耐えた金属製の鉄柱

跡地に建てられる分譲マンションは6階建てで、2026年8月着工、2028年3月から入居予定だ。ちなみに外観は県教育会館のデザインを踏襲したものとなるよう検討されているということで、昭和のレガシーが形を変えて、また鹿児島の街に姿を現すことになる。

鹿児島テレビ
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