泡や凍結させる駆除方法ってどう?

――殺虫剤を使わない駆除方法(泡で窒息させる・凍らせる・焼く)ってどうなの? 

殺虫成分が入った薬剤を使わずに、ゴキブリを駆除する方法はいくつか存在します。そのひとつが、「泡系の殺虫スプレー」を使って泡でゴキブリを殺す方法です。泡は中性洗剤が主成分で、泡をふきかけられたゴキブリは、腹部にある気門(呼吸するための穴)が界面活性剤で塞がれ、呼吸ができなくなって窒息死します。

以前は繭状に泡でゴキブリを包みこみ、そのまま捨てることが可能な商品も販売されていました。ゴキブリを見たくない、触りたくないという人にはこの方法が適しています。しかし、実際に使ってみると、狙いを定めて泡を走り回るゴキブリに命中させることは難しく、部屋中が泡だらけになってしまうといったデメリットがありました。また、じゅうたんに泡がくっついて取れなくなったという困ったことも起きました。

泡系や凍結系のスプレーは命中させるのが難しい(画像はイメージ)
泡系や凍結系のスプレーは命中させるのが難しい(画像はイメージ)

泡スプレーの他に登場したのが「凍結系の殺虫スプレー」です。殺虫剤を使わずに冷却成分をゴキブリに吹きかけて凍死させる方法がこれです。凍死というか、温度差でショック死するのが本当のメカニズムなのだろうと思います。この方法も逃げまどうゴキブリを追いかけながら命中させなければなりませんので、いざやってみるとうまく駆除ができないのです。やっているうちに、あっというまに1本使い切っている…なんていうことがあり、費用対効果が割に合いません。

これらの方法は、どうしても殺虫成分の入った薬剤を使いたくないという人には選択肢の一つとなりますが、デメリットもあることは知っておきましょう。

なお、絶対にやってはいけないのが、バーナーでゴキブリを焼き殺す方法です。ゴキブリは火で炙るとすぐに死にますが、どんなに注意していたとしても、まわりに火が燃え移る可能性があります。

バーナーよりももっと危険なのが、殺虫スプレーのガスにライターで火をつけて「火炎放射器」として使う方法です。最初は、バーナーのように火が勢いよく出ていますが、ガスが少なくなるにつれて火の勢いが弱くなり、やがて缶のなかに引火。最悪の場合はスプレー缶自体がバ〜ンと爆発して大変なことになってしまいます。あまり報道されませんが、ゴキブリ駆除で火災が起こる原因の多くは、バーナーよりもスプレー缶の間違った使い方にあるようです。

足立雅也(あだち・まさや)
害虫駆除や鳥獣対策を手掛ける「808シティ」代表取締役社長。

構成=中村宏覚

足立雅也
足立雅也

害虫駆除や鳥獣対策を手掛ける「808シティ」代表取締役社長。大手害虫駆除専門チェーン店勤務中に全国コンクールで優勝。その後、業務用殺虫剤、噴霧器を販売する商社に転職。蚊やマダニに対する殺虫剤効力評価試験に協力する。宿泊関連業界、殺虫剤メーカーと協力し、トコジラミ駆除方法を研究し、講演や執筆にて全国に広める。独立後、自ら現場作業をする傍ら、数社の技術指導を行う。