岡山市出身の小説家・岡崎隼人さんが手掛けたホラー小説が8月に出版され、全国の書店員から絶賛されています。鮮烈なデビューの後に陥った深刻なスランプ。それでも、小説を愛し続けた岡崎さんの新境地です。
▽『書店怪談』一節
「お客さんに言われたんですよ。盛り塩した方がいいよ。ここ、なんかいるからって。」
8月15日、岡山市北区にある書店であるホラー小説の出版記念イベントが行われました。執筆したのは、岡山市出身の小説家岡崎隼人さん、39歳です。
(小説家 岡崎隼人さん)
「本自体に作者の魂がこもっているし書かれた側の命もこもっているし作者の中にはとっくに亡くなっている人の本も山ほど置かれているつまり死者の声が書店にはいっぱいあるそんな場所で何も起きないわけないと思っていたそこで(怪談が)あるよと聞いてやっぱりと思いできたのがこの書店怪談」
『書店怪談』の主人公は小説家・岡崎隼人。新作が思うように書けず焦っていた岡崎は、書店にまつわる怪談を集め、ホラー小説にすることを思いつく。順調に執筆は進んでいたが、寄せられた怪談には共通点があることに気づき、次第に恐ろしい真実に近づいていくというストーリーです。
書店怪談は8月に出版されると全国の書店員が絶賛。たちまち、重版が決まりました。
(参加した書店員)
「(書店での怪談を)もとに物語を作っていくという岡崎さんの創造力がすごくて感服した」
(ファン)
「実際に書店員の話を岡崎さんが現地に行って夜暗い中を歩いて現地を見ながらリアリティのある話を作っているのが魅力だと思う」
現在は専業作家として活動している岡崎さんですが、その道のりは決して平たんではありませんでした。
岡山市北区にある吉備路文学館。岡崎さんの執筆拠点です。小説家として活動を始めて2025年で19年目。現在も岡山市に住み、執筆活動に精を出しています。岡崎さんは2006年、20歳の時に処女作、『少女は踊る暗い腹の中踊る』が文学新人賞のメフィスト賞を受賞。鮮烈な小説家デビューを果たしました。
(岡崎隼人さん)
「当然うれしかった。それに加えて第一歩を踏み出したと感じた。大きな扉を開いてしまったわけなのでそれに責任も伴ってくるという感覚もあった」
このまま小説家として大成し、読者によりよい作品を届けていきたいと考えていた岡崎さんですが、待ち受けていたのは、深刻なスランプでした。
(岡崎隼人さん)
「自分が書く物語をうまく信じられなくなった。いろいろと考えてみるが書き進めることが難しくなっていった。」
書こうと思えば思うほど書き進めることができないジレンマ。岡崎さんの小説家人生に立ちはだかる高い壁でした。しかし、こうした中でも、岡崎さんを支えたのは小説だったと言います。
(岡崎隼人さん)
「苦しい状態にあっても支えてくれたのは小説だった書けないと泣いているときでも小説を読んでいた小説という芸術に恩返しをしたいとなりどうにか自分の力で書き続けていきたいと思ってあがいていた。」
執筆への思いはやまず、スランプを打破すべく岡崎さんはある行動を取ります。
(岡崎隼人さん)
「徹底的に小説を書くための技術的な側面を身に付けようと思った具体的には古今東西のいろいろな物語をめちゃめちゃ分析したそれによって自分の中の力を総合的に上げていった」
岡崎さんは小説だけでなく、映画やマンガなど、あらゆる物語の構成を分析してあらすじを決まった文字数でまとめるといった作業を繰り返しました。これまでに書いたノートは500冊に上るといいます。
(岡崎隼人さん)
「あれらがなかったら今の僕は絶対にない研究のおかげで力がついたと思う」
こうした努力が実を結びスランプから抜け出した岡崎さんは18年もの月日を経て2024年、待望の2作目となる『だから殺し屋は小説を書けない。』を出版。そして8月、3作目となるホラー小説、『書店怪談』が出版され、今、人気を集めています。
(岡崎隼人さん)
「書店怪談という作品はある意味で本屋への恩返しであったり本屋という場所がいかに特別ですごい場所だというのを十全に描きつくしたかったというのがこれを書いた欲望の根っこにある」
自分の小説が誰かの心を救えるように。小説への感謝の気持ちと小説家としての使命感が岡崎さんを新境地へと導きました。