長崎港から船で35分。「高島」で活動する地域おこし協力隊が、このほどコーヒースタンドをオープンした。島の内外の人達をつなぎ、「持続可能な島」にするための拠点となることを目指している。

スローな時間“たかしま時間”が流れる島

長崎市高島の「高島町小売市場」の一角にある「33COFFEE(ささコーヒー)」。

「33COFFEE(ささコーヒー)」は市場の一角にある
「33COFFEE(ささコーヒー)」は市場の一角にある
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小さなコーヒースタンドだ。

オーナーの池田美和子さんは「食の6次産業化プロデューサー」と「コーヒーインストラクター」の顔を持つ。

オーナーの池田美和子さん
オーナーの池田美和子さん

30年以上住んでいる福岡では、カフェを2店舗経営していた。高島には小学6年生と中学生時代に住んでいた。ふと、「高島は今どうしているかな」と思った時に「地域おこし協力隊」の募集を知り、2024年に応募して活動を始めた。現在は、福岡と高島で2拠点生活を送っている。

のんびりとコーヒーを淹れてくれる
のんびりとコーヒーを淹れてくれる

「福岡は街が勢いよく姿を変え、活気を感じる一方で、高島の静けさは心地よかった」と語る池田さん。

あちこちで猫に出会う島 のんびりだ
あちこちで猫に出会う島 のんびりだ

とはいえ、高島は建物は老朽化し、アパートや行政の建物など廃墟と化しているのも事実。しかし、時間の流れが都会とは明らかに違う。それを池田さんは“たかしま時間”と名付けた。

230人の島民で“持続可能な島”に

島を歩くと、南国ムードのハイビスカスが出迎えてくれる。

ハイビスカスが南国ムードを演出する
ハイビスカスが南国ムードを演出する

2024年にドラマで脚光を浴びた「端島」通称「軍艦島」とともに、「高島地区」を構成する島の一つだ。

高島海水浴場
高島海水浴場

高島はかつては炭鉱で栄えたが、1986年の閉山後もコバルトブルーが広がる海水浴や飛島磯釣り公園、キャンプ場などで気軽にリゾート気分を味わえる。明治日本の産業革命遺産の構成資産として、端島と高島の炭坑は世界文化遺産に登録されている。特産品の「たかしまフルーティートマト」は高級トマトとして人気だ。

人口は現在230人
人口は現在230人

50年以上前は1万8000人いた人口は、今では230人(2025年7月末現在)で減少の一途をたどっている。高齢化は進む一方で、島に飲食店もない。

池田さんは、高島で人が住み続けられる“持続可能な島”であるために「人が集う拠点」が必要だと考え、コーヒースタンドを作ることを決めた。

元は魚屋だった。看板はそのまま残している
元は魚屋だった。看板はそのまま残している

「33COFFEE」は、市場の空き店舗を利用した。「元は魚屋で、看板はあえて残しました。その方が島の人達は馴染みがあるから」。

コーヒーインストラクターの池田さんがドリップしてくれる
コーヒーインストラクターの池田さんがドリップしてくれる

好みを伝えると、それに近いコーヒー豆を池田さんがセレクトし、ドリップしてくれる。

夏休み、子供たちがソフトドリンク作りを体験した
夏休み、子供たちがソフトドリンク作りを体験した

この夏は島の子供たちがソフトドリンク作りを体験した。「子供たちに島で商売することが楽しいなと思ってもらえたら」と池田さんは話す。子供たちは目を輝かせながら商品作りを行った。

島を支える人で成り立つ「高島」

「33COFFEE」がある市場は、現在営業しているのは数店舗で、買い物客もまばらだ。

市場は数店舗のみ営業している
市場は数店舗のみ営業している

「かつては子供が迷子になるくらいに人であふれていてね。今はみんなインターネットで買っているからお客さんも来ない」と、店を切り盛りするおばあちゃんは話す。

(中央)小林稔さん
(中央)小林稔さん

「えびすや」の代表・小林稔さんは20年前に脱サラして店を継いだ。長崎市在住だが、毎朝仕入れた商品を始発の便で運び、店を切り盛りしている。

「高島トマト」を使ったドレッシングは稔さんの手作り
「高島トマト」を使ったドレッシングは稔さんの手作り

「かつて住んでいた時に、島の人達に子供たちを育ててもらった。だから恩返しをしたい。ただそれだけの気持ちで毎日店に立っている」と話す。

高島への移住者「レインボーミュージック」31日伊王島でのライブイベントに参加する
高島への移住者「レインボーミュージック」31日伊王島でのライブイベントに参加する

人口は減少する一方で、高島への移住者もいる。音楽グループ「レインボーミュージック」のメンバーは、10年ほど前に関東から高島へ移住し、音楽活動を続けている。「レインボーミュージック」は、31日にお隣の伊王島でのライブイベントに参加する。夏休み最後の島フェスで島の魅力を広める。

高島海水浴場は多くのサンゴ礁を観察できる
高島海水浴場は多くのサンゴ礁を観察できる

高島海水浴場は多くのサンゴ礁を観察できる場所として知られている。「シュノーケリングピクニック」を企画している「やったろうde高島」の小村秀藏さんも、15年前に高島へやってきた移住者だ。

「シュノーケリングピクニック」は2時間4000円だ
「シュノーケリングピクニック」は2時間4000円だ

小村さんは「サンゴ礁を守るためにシュノーケリングツアーを始めた」と話す。環境教育に力を入れ、今では年間1500人ほどが高島を訪れ、シュノーケリングを楽しんでいる。

島内は路線バスで移動できる
島内は路線バスで移動できる

池田さんは、そうして島のために力を注ぐ人たちのおかげで今の高島があることを実感している。だからこそ、ゆったり流れる「たかしま時間」を島民にとっては「誇り」と思ってほしいし、外から来た人と島民が一緒に「高島らしい過ごし方」をしてほしいと願う。

1杯のコーヒーで高島の人が集う場になることを願って
1杯のコーヒーで高島の人が集う場になることを願って

「33COFFEE」がそんな“たかしま時間”を楽しむための拠点になればと思っている。拠点があれば、高島に関わる人の居場所となり、高島ファンを増やせたら―。

池田さんが出しているコラム
池田さんが出しているコラム

そして、住んでいる人にとっては“安心して暮らし続けられる日常”を送れる「持続可能な島」となることを目指し、池田さんは活動を続けている。

(テレビ長崎)

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テレビ長崎
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