今週は防災システム研究所の山村武彦所長と記録的大雨の爪痕が残る県内各地を回り、その教訓について考えています。最終回の２１日は、市内中心部の下通アーケードなども冠水した熊本市を取材。『内水氾濫』などへの備えについてお伝えします。
【防災システム研究所 山村 武彦 所長】
「今回のこの繁華街の浸水は『内水氾濫』ということになる」
８月１７日、山村武彦所長とともに、熊本市中央区の下通アーケードを訪れました。
【郡司 琢哉 キャスター】（８月１０日午後１１時ごろ）
「熊本市中央区の通町です。雨で景色が白くかすんでいて、市電のレールも完全に水に漬かってしまっています」
８月１０日の深夜から１１日の未明にかけて猛烈な雨が降った熊本市。３時間の降水量は観測史上最も多い２２３．０ミリで、平年８月１カ月の雨量をわずか３時間で上回りました。
【郡司 琢哉 キャスター】
「アーケードの中まで水が入ってきて、くるぶしの高さまで水に漬かってしまっています」
下通アーケードでは『内水氾濫』が発生しました。
【防災システム研究所 山村 武彦 所長】
「都市型水害ですね、排水機能が追いつかない。排水機能が機能していれば、降った雨も排水溝や側溝などから河川の方に流れ込んでいくけど、大雨が降っている時は河川の水位も上がっているので排水機能があまり機能しない。結果として、そこにたまってしまい『内水氾濫』になってしまう」
さらに、山村所長は下通アーケード周辺の地形にも着目します。
【防災システム研究所 山村 武彦 所長】
「例えば、向こうの白川よりもこの辺りが低くなっている。周辺に降った雨がわずかな傾斜だが、全部、この低地に流れ込んでくる」
今回の大雨で浸水被害に遭った下通アーケード近くの飲食店を訪ねました。
ビルの地下１階にある球磨焼酎専門バー『６９ｓｐｉｒｉｔｓ（ロックスピリッツ）』です。
【防災システム研究所 山村 武彦 所長】
「どこから水が来たの？」
【店主 星原 克也 さん】
「壁のここから水が出てきた」
８月１０日の午後１１時ごろ、突然、壁の隙間から店内に水が入ってきたといいます。その後、浸水は拡大し、天井の壁際からも大量の水が店内に…。店は床上浸水し、現在、休業しています。
こちらは、店主の星原さんが当日、下通アーケードで撮影した映像。マンホールから水が噴き出していました。
【防災システム研究所 山村 武彦 所長】
「これが『内水氾濫』の典型例。排水溝に入った雨水が低地の排水溝から噴き出すという状態が起こる」
この『内水氾濫』によって多くの店舗が浸水被害に見舞われた下通アーケード。
山村所長は「浸水対策が不十分だった」と指摘します。
【防災システム研究所 山村 武彦 所長】
「本来であれば、こういった浸水のリスクがある所は止水板の設置や土のう袋を積むとかしていれば１０センチか２０センチの浸水であれば店内に入るのを防ぐことは可能。そういう対策ができていなかったのではないか」
一方、一連の大雨では熊本市内でも多くの道路が冠水し、車の浸水被害も相次ぎました。
【尾谷 いずみ キャスター】
「生活の手段として、移動の手段として、車がかかせないという方多いが、そうした中で、あるべき避難の形というのはどのようなものがありますか」
【防災システム研究所 山村 武彦 所長】
「車で避難する場合は、早めに避難すれば安全。ところが避難のタイミングを失ってしまう、見過ごしてしまうと、道路が冠水している状態になっているので、かえって家族ごと危険の中に入っていくことになってしまうので、やはり『早めの避難』を心がけることが大事」
「アンダーパスなど冠水が想定される道路を事前に調べ、避難場所までの経路の安全を確認してほしい」と呼び掛けます。
【尾谷 いずみ キャスター】
「今回の熊本での被害の状況をご覧になって、どのように評価されますか」
【防災システム研究所・山村武彦所長】
「床下、床上浸水など被害が非常に多岐にわたっている。土砂災害も各地で起きていて、かなり地盤も緩んでいる所がそのままになっているようなので、今後の対策が非常に重要」
最後に、山村所長は「被災者に寄り添った支援が必要だ」と話しました。
【防災システム研究所 山村 武彦 所長】
「あまり表面に出ていない被災者を支援することがなかなか難しくなってきているので、ぜひ被災者に寄り添う気持ちを形に表してもらうといいかなと。『あすはわが身、ひとごとではない』と思うのでそういう寄り添う心が大事だなと思う」
【尾谷 いずみ キャスター】（スタジオトーク）
山村所長が最後に語っていた『あすはわが身』の話は、『お互いさま』の気持ちで寄り添う心が必要という意味。今求められているのはボランティアの力、または義援金での応援もあります。今自分にできることを考え行動していきましょう。
