広島・府中町で起きた強盗殺人事件をめぐり、16歳の少年と18歳の男が起訴された。
2022年の少年法改正により18歳と19歳は「特定少年」とされ、起訴後の実名報道が可能に。今回、広島地検は18歳の男の実名を公表した。
公表の理由「社会に与えた影響深刻」
2025年4月、事件は夜の公園で起きた。
共犯の女が被害者の男性を誘い出し、援助交際を口実に因縁をつけて暴行。殺害して金品を奪った。

逮捕されたのは10代の3人。そのうち、府中町に住む建設作業員の16歳の少年が犯行を計画し、殺意をもって木の棒で男性を殴ったとして強盗殺人の罪に問われた。
職場の同僚で海田町に住む徳永孝志被告(18)は、少年から報酬を持ちかけられ犯行に加わったとされる。暴行を加えたが殺意はなかったとして強盗致死罪に問われた。男性を公園に誘った愛媛・松山市の18歳の女は恐喝の疑いで家裁送致され、少年院収容2年の保護処分となった。
広島地検は徳永被告の実名を公表した理由について、「重大事案であり地域社会に与える影響も深刻なため」と説明した。
“10代凶悪犯罪”処罰のゆくえは?
法改正はなぜ行われたのか?
少年事件に詳しい広島大学大学院の𠮷中信人教授はこう語る。

「18歳・19歳は刑法上は少年だが民法上は成年でもある。選挙権もある以上、刑事手続きでも大人に近づける必要があった」
さらに𠮷中教授は、報道の在り方について「こういう時代だからこそ、『AであってBではない』とメディアが主体的に責任を持って伝える意義がある」と強調。実名報道は、ネット上などで憶測による誤った犯人特定を防ぐねらいもある。
今後、2人は刑事裁判を受ける。強盗殺人罪と強盗致死罪には「死刑」または「無期懲役」が課されることになっている。
一方で、𠮷中教授は「家庭環境や交友関係が量刑にどう反映されるかが注目点」と話す。法改正で厳罰化が進んでも、少年法では被告の生い立ちや更生の余地が考慮され、減刑される可能性もあるという。
10代による凶悪犯罪に、裁判所がどのような判決を下すのか。社会に重くのしかかる事件は、少年法改正の意義を問い直す契機となっている。
なお、テレビ新広島は、結果は重大で社会的影響も大きいことなどから、この事件については実名報道することが妥当であると総合的に判断しました。
(テレビ新広島)