市販薬などを過剰に摂取する、いわゆる“オーバードーズ”。

近年問題となっていますが、乱用目的で使用した経験のある中学生が、推定でおよそ2%いることが分かりました。

なぜ若者が手を出してしまうのか、その実態と危険性に迫ります。

■居場所がない若者らが集まる大阪・ミナミの「グリ下」

13日、取材班が訪れたのは大阪・ミナミ。

【記者リポート】「夏休みだからでしょうか。平日なのに、いつもより人が多い気がします」

外国人観光客でにぎわう中、川沿いには…。

【記者リポート】「多くの若者が、座り込んで談笑しています」

ここは大阪・ミナミのグリコの看板の下「通称・グリ下」。

家庭環境など様々な理由で、居場所がない若者らが集まる場所で、未成年の飲酒や喫煙、いわゆるパパ活などが問題になっています。

■「仕事のストレス、人間関係、しんどくて…」とオーバードーズする女性

一体、若者たちは何をしているのか、向かってみると…。

【女性(22)】「ちょっとふらふらする」

様子がおかしい女性に遭遇。

22歳の女性が手にしていたのは、咳止めの薬。すでに服用した跡が…。

【女性(22)】「さっき飲んだやつです。1時間前くらいに。15錠カルピスで飲みました」

女性がしていたのは、市販薬などを過剰に摂取する、いわゆる“オーバードーズ”です。

【女性(22)】「最近は毎日、仕事のストレスで。人間関係と介護の仕事をしているので、介護のしんどさ、それでやってしまって」

■未成年に広がるオーバードーズ 飲むと「めっちゃ気持ち悪い」

最悪の場合、命を落とすケースもあるオーバードーズ。

その実態は、未成年にも広がっていました。

(Q.身の回り・ご自身でオーバードーズの経験は?)
【未成年】「あるやろ、そりゃあ」

【高校年生(16)】「高1から『なう』で(現在も)やっている。死んでる写真。ぱきって(ハイになって)記憶なくして、駅で寝てる写真」

(Q.飲んだらどんな感じ?)
【高校生(16)】「めっちゃ気持ち悪い。ぐるぐるするっていうか、頭の中でずっとうるさい感じ」

(Q.気持ち悪いのになぜやる?)
【高校生(16)】「気持ち悪くなった後に、ふわふわになって楽しくなる。それが楽しいから一生やってる」

親とケンカし、ストレスを和らげようとオーバードーズを始めてしまったという16歳の女子高校生。

■「一緒にぱきろう」 55人に1人中学生がオーバードーズ経験

なかには中学生の姿も…。

【中学3年生】「一緒にぱきろう(ハイになろう)みたいな。みんなぶっ倒れてる」

若者の間で広がりを見せるオーバードーズが近年、社会問題となる中…、厚生労働省は初めて中学生のオーバードーズ経験割合を発表。

その結果、推定およそ2%。55人に1人の中学生が、乱用目的で薬を過剰に摂取した経験があることが分かりました。

(Q.いつから始めた?)
【中学3年生】「ここ数カ月で1回だけやって、もうやらないです。(酒に)酔ってて」

ある中学生は舌が青くなっている写真を記者に見せ、このように話します。

【中学3年生】「これは眠剤。5錠ぐらい飲んでて、その時しんどくて、記憶なくしたくて」
(Q.今もちらっと(青い舌が)見えたけど)
【中学3年生】「いまはガリガリ君を食べました。かき氷も食べた」

本当なのでしょうか…

■「もうちょっと実態は多い」とNPO法人の代表

取材で見えてきた中学生にも蔓延するオーバードーズの実態。

若者を支援するNPO法人の代表は…。

【NPO法人あいむ 藤野荘子代表理事】「55人に1人という(調査結果)は、そのぐらいいるのかな。2クラスに1人ぐらいいる、もしくはもうちょっと実態は多い」

国は20歳未満が薬局などで指定された薬を購入する時に、個数制限を義務付けるなど対策をしていますが…。

【NPO法人あいむ 藤野荘子代表理事】「規制をしてもいたちごっこ。心の孤独を紛らわせるためにしていて、そこをの解決が根本的な解決につながる」

■「何したんやろう」オーバードーズを続けた30代の後悔

オーバードーズを続けるとどうなってしまうのか。

訪れたのは奈良県にある依存症の支援施設。

15歳のころからオーバードーズを繰り返していたという30代のAさん。

薬を過剰摂取して錯乱状態になり、母親に暴力を振るったことで去年、有罪判決を受けました。

【薬物依存症の支援を受けるAさん(30代)】「逮捕された時も錯乱状態でした。薬ほしさに体売ったりとか、窃盗とかやったり、いろいろ犯罪を繰り返してしまう」

Aさんは多い時で1日100錠を摂取していたということですが、いまは支援を受けながら、およそ1年間、オーバードーズをしていないということです。

【薬物依存症の支援を受けるAさん(30代)】「何回も倒れて、精神病棟入院か、ICUに入って何日間も目を覚まさなかったり、薬が抜けてから正常の頭に戻って、『何したんやろう』ってずっと泣いてました。後悔、後悔だらけです」

人の人生を一変させるオーバードーズ。

Aさんがいま、若者に伝えたいこととは。

【薬物依存症の支援を受けるAさん】「私も『助けてくれる人なんかいない』、『死にたい』と思っていたけど、結局オーバードーズで死ねなくて、『絶対1人じゃないよ』って言いたいです」

(関西テレビ「newsランナー」2025年8月14日放送)

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