自民党内で沸き起こっていた「石破おろし」ですが、時事通信の世論調査で、自民党支持層の65.9%が「辞任すべきと思わない」と答えたということです。
関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」に出演した、政治ジャーナリストの青山和弘さんは、石破総理の「続投」を支持する世論が高まっていることについて、「右派ポピュリズム」への警戒感などを挙げるとともに、「石破おろし」が進むかどうかについてのキーマンは自民党の森山幹事長と立憲の野田代表だと指摘しました。
■高まる世論調査での「石破首相続投」への支持 背景にあるのは…
【政治ジャーナリスト 青山和弘さん】「自民党内を取材したところ、まず1つ目は、『石破おろし』をしているのは『裏金議員』たちで、『“裏金議員”がなに石破おろしなんてしてんだ?』っていう反感が強いんじゃないか、ということです。
決して『裏金議員』だけがやっているわけではないのですが、こうした、今の自民党の厳しい環境を作った人たちが『石破おろし』を起こしてることに対する反感が強いんじゃないかというのが1つですね。
次に、日本の株価が史上最高値を更新しています。これだけ経済が好調の中で、総理大臣を変えると、この流れに水をかけてしまうかもしれないので、今はこのままでいいんじゃないかっていう考え方が、特に財界の人に多いんですね」
次にポスト石破への期待感が低いんじゃないかということです。石破さんを替えるのはいいけど、『次に誰か?』って考えると、『あまり大した人いないぞ』と。
例えば小泉(進次郎)さんは、いかにもまだ早いし、高市(早苗)さんは、保守層には人気があるけれど、逆にちょっと極端過ぎて良くないんじゃないか、みたいな声もありますので、だったら石破さんのままの方がいいんじゃないかっていう声もあるわけなんです」
■”最大の理由”?「右派ポピュリズム」への不安
【政治ジャーナリスト 青山さん】「4つ目、今自民党内でこれが最大の理由なんじゃないかって語られているのは、いわゆる『右派ポピュリズム』への不安ということなんです。
今回の参議院選挙でも明らかになったのは、ナショナリズムの勢いが強まっているんじゃないかということです。参政党と国民民主党が躍進した理由もそうなんじゃないかと指摘されています。
そんな中で今、石破さんを代えてしまうと、要はもっと右寄りといいますか、右傾化が強まっちゃうんじゃないか(という懸念がある)。これに対して、特にお年寄りを中心に反発心が強いんじゃないか、と。
特に今年は戦後80年で、『戦争はよくなかった』という思いが強い中で、そうした傾向が石破さんの勢いを逆に増してるんじゃないかということなんですね。
今回の世論調査の特徴は、年齢が上の人ほど石破さん支持が高いというのもあるんですよ。世代間のギャップもあるんですが、こういったところにも、『右派ポピュリズム』に『対抗して欲しい』っていう理由があるんじゃないかと見られているんです」
■『戦争の反省と教訓を胸に刻む』「石破カラー」にじむ「戦没者追悼式での式辞」
【青木源太キャスター】「石破総理は自民党内ではリベラル?」
【政治ジャーナリスト 青山さん】「かなりリベラルですね。きょう=8月15日の戦後80年の戦没者追悼式でのあいさつでも、そうした石破カラーがにじんでいました」
石破総理の式辞には、13年ぶりに『反省』の言葉が盛り込まれました。
【石破総理】「戦争の惨禍を決して繰り返さない。進む道を二度と間違えないあの戦争の反省と教訓を今改めて深く胸に刻まねばなりません。悲痛な戦争の記憶と不戦に対する決然たる誓いを世代を超えて継承し、恒久平和への行動を貫いて参ります」
【青木キャスター】「青山さん、今回反省という言葉を石破総理は使いましたね?」
【青山さん】「これ13年ぶりなんですね。13年ぶりっていうことは、前に使った人は誰かというと、立憲民主党の野田佳彦代表が総理大臣の時に、この『反省』という言葉が入ったんですが、それ以降、安倍さん以降はもうこの反省という言葉は、この追悼式の挨拶から抜けていたということなんですね」
■「分断」に見える石破総理の考え
また石破総理は式辞で「いまだ争いが絶えない世界にあって、分断を排して寛容を鼓し、今を生きる世代とこれからの世代のために、より良い未来を切りひらきます」と述べました。
【青山さん】「もう1つ、私が気になったのは、『分断』という言葉をあえて使ってるんですね。この前の参議院選挙でも、例えば『核兵器は安上がりだ』って発言した候補者がいたり、自民党の中にも、沖縄のひめゆりの塔の戦争認識について、異論が唱えられたり、やはり『右派ポピュリズム』的な、石破さんから言わせれば、過去の歴史の反省を忘れたような言葉が出てきていると。それに対して、『抗っていこう。こういうことを思い出していこう』っていう思いが出ているんですね。
こうしたことに対して、石破さんを支持しようという人もいるし、一方で若い人を中心に『いつまでも反省じゃないだろう』と。今の東アジアの現状と向き合うには、やはり日本もある程度、核武装とまでは言わないけれども、『対抗力を持つべきだ』という声もあって、この辺が分断に繋がるかどうかっていうのが、『石破おろし』の流れにも大きく影響を与えるという状況になっているんですね」
■「石破おろし」キーパーソンは森山幹事長と立憲・野田代表
【青木キャスター】「今回はある意味、『石破カラー』を出してきたと思うんですけれど、今青山さんがおっしゃった今後の流れの中でのキーパーソンは誰になるんですか?」
【青山さん】「今後の『石破おろし』のキーパーソンは、自民党の森山裕幹事長、そして立憲民主党の野田代表です。
森山さんが辞めるとやはり石破政権はかなり大きく傾きますので、森山さんが今後、幹事長を辞めるかどうかが大きいポイントなのは間違いないです。
もう1人、野田代表は先日の臨時国会で、石破さんが出すかどうか今検討中の『(戦後)80年談話』について、『やりたいことがあるならやるべきだ』と。中道の政治、いわゆる『右派ポピュリズム』と対抗していくために、『一緒にやりませんか』みたいなことを(考えているのではないか)」
【青木キャスター】「2人は政治的なスタンスは近いんですか?」
【青山さん】「近いんですよ。エールを送っている。この野田さんが石破さんとの協力姿勢を明らかにすると、臨時国会も行き詰まっちゃうぞと思われたのが、立憲民主党が協力してくれれば、法案も通るし『意外と石破政権続けられるじゃないか』っていう流れができてくる可能性もあるんですね。
だからまず森山さんがどうするか、そして、野党第1党の立憲民主党の野田さんが、どういうスタンスを取るかっていうのも、『石破おろし』の動きに大きく影響を与えそうです」
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2025年8月15日放送)