部屋の布団やソファの中に潜んでいる一般のダニ(イエダニ、ツメダニなど)とマダニを混同している人も多いようですが、別物です。

普通のダニは小さくてほぼ肉眼では見えないのに対して、マダニの成虫は3〜8ミリほどの大きさなので肉眼でも十分確認できます。またマダニは家の中ではなく、野山や草むら、田んぼのあぜ道など野外に生息していて、シカやイノシシなど野生動物の血液を吸って生きています。
都市部にはほとんど存在しないと考えられていたのですが、実際には住宅街や近所の公園にもマダニは生息しています。とくに近年はシカ、イノシシ、クマ、サルなどが山から住宅街に降りてくることも多くなり、子供たちの遊び場となっている自宅の庭や公園の草むらでマダニに噛まれるリスクも高まっています。
噛まれたことにすら気づかない?
部屋のなかに潜むイエダニやツメダニに刺された場合は強い痒みをともなうため、すぐに刺されたことに気づきますが、マダニに噛まれても痒みや痛みといった自覚症状はほとんどありません。多くの場合は噛まれて数日経ってからマダニが皮膚にくっついているのを発見して、初めて「噛まれた!」と気づくことになります。
マダニの吸血方法はかなり独特です。まず動物や人間の皮膚の柔らかい部分(脇腹や太もも、背中など)を探して、噛む位置を決めます。で、いきなり血を吸うのではなく、皮膚の表面をかじっていき、頭を皮膚に深くめり込ませます。そして頭が完全に埋まったら、口からセメント状の物質を出して、頭を皮膚にがっしりと固定するのです。

そのあとは、皮膚にくっついたままで2〜10日かけてじっくり血を吸っていきます。吸血前のマダニの大きさは3〜8ミリ前後ですが、吸血後は小豆サイズ、大きい場合は100円玉やブドウ粒くらいのサイズにまで膨らみます。
そのため、噛まれた人の多くは、入浴や着替えの際などに自分の脇腹や太ももや背中を見て、「あれ?こんなところにホクロなんてあったっけ?」と異変に気づき、マダニに噛まれたことを初めて知ることになります。
見つけても取ってはダメ!
マダニが皮膚にくっついて血を吸っているのを発見した場合、ほとんどの人は「気持ち悪い」と感じて、すぐにでもつまんで引きはがしたくなるはずです。でも、そこは我慢して、マダニを付けたまま皮膚科を受診してください。