史上初となる、不祥事での夏の甲子園大会期間中の出場辞退。
名門校による前代未聞の事態に大きな波紋が広がっています。

広陵高校・堀正和校長:
各方面の皆さまに多大なご迷惑・ご心配をおかけしましたこと、深くおわび申し上げます。誠に申し訳ございません。

10日、甲子園球場のある兵庫・西宮市内で野球部の出場辞退を発表した広陵高校の堀校長。

広陵高校・堀正和校長:
過去に日本高等学校野球連盟に報告した部員間の暴力に伴う不適切な行為だけではなく、監督やコーチから暴力や暴言を受けたとする複数の情報がSNS等でとりあげられています。こうした事態を重く受け止め、本大会への出場を辞退した上で、速やかに指導体制の抜本的な見直しを図ることにいたします。

広島県の広陵高校は春のセンバツ大会で3度日本一の経験があり、夏の選手権大会でも準優勝4回。
主なOBに元阪神監督の金本知憲さんや巨人の小林誠司捕手、ソフトバンクの有原航平投手など多くのプロ野球選手を輩出してきた高校野球界屈指の名門として知られています。

そんな名門校で、上級生から下級生への暴力事案が発覚。
さらに“監督が部員へ暴行した”などの真偽が明らかになっていない別の情報も浮上したことで、出場辞退を決断したといいます。

まず明るみになった“上級生による暴力事案”とは…。

広陵高校によると2025年1月、当時2年生の野球部員4人が1年生の部員1人に対し、胸や頬をたたくなどの暴力行為を行ったといいます。

この事案について、2025年2月、広陵高校は日本高野連に事案を報告。
野球部は3月に高野連から厳重注意処分を受ける一方、その後に行われた広島県大会を制したことで、夏の甲子園の出場切符を獲得していました。

広陵高校は甲子園大会の開幕直前まで、この暴力事案を公表することはありませんでしたが、暴力を受けた部員の関係者とされるSNSの投稿が拡散しました。

ネットを中心に騒ぎが大きくなる中、大会開幕翌日の8月6日、高校側が事案を認め経緯を公表。
大会本部や高野連も大会出場の判断に変更はないとして、広陵高校は8月7日、北北海道代表の旭川志峯高校と対戦しました。

この試合には3対1で勝利。
2回戦進出を決めた時点での広陵高校の中井哲之監督は「(Q.暴力行為の騒ぎがあったが試合にどのように影響した?)いやしてません!学校が報告したとおりなので、それとは全く関係なくて、次の試合に向けて対策をたてて、全力を尽くすだけです」と話していました。

ところがこの1回戦直前、今回公表した部員同士の暴力事案とは別に、2024年に当時の野球部員が監督らから暴力を受けたとするなどの他の情報も新たにSNS上で拡散していたのです。

騒ぎをさらに大きくしたこの“別の暴行情報”について、広陵高校の堀校長は10日、「(Q.“別の暴行情報”について)全部細かく調査をしたが、事実関係が出てきませんでした。第三者委員会に委ねています」と述べた一方、こうした騒ぎが大きくなり、部員や関係者らの安全が損なわれているとも言及。
それが出場辞退の大きな要因だと語りました。

広陵高校・堀正和校長:
(生徒が)登下校で中傷を受けたり、追いかけられたり、寮で爆破予告があったり、そういったこともSNS上で騒がれている。

一方、2025年1月の暴力事案について報告を受け、当初は大会への出場を許可していた高野連側。
新たな情報を把握しておらず、対処ができなかったと語ります。

寶馨高野連会長:
第二、第三のですね、事柄が浮上してきたもんですから。しかも、試合当日あたりにですね、浮上してきたもんですから。1回目の事象については時間的な余裕がありますけれども、それ以後のことについてはですね、ちょっと対処のしようがなかったというのは正直なところですね。(全国の高校からの報告数は)年間1000件以上にもなるわけですけどね、その審査のやり方自体がですね、ひょっとしたら改善の余地があるかもしれません。

危機管理の専門家は次のような見解を示します。

危機管理コンサルタント・増沢隆太さん:
強豪高校といわれる立場に対しては、特にSNSを中心とするネット環境では非常に批判が集まりやすい。(最初に)厳しめに対応しておけば出場辞退せずに済んだかもしれない。