7月30日に起きたロシア沖の巨大地震で津波警報が発表された中に、AI生成や過去映像を使った偽の津波動画やデマ投稿がSNSで拡散した。専門家は政府や自治体、報道機関の公式情報を基づいて、ソーシャルメディアの情報を鵜呑みにせず冷静に行動することだ重要だと指摘する。

生成AIで作られたフェイク動画・デマ情報がSNSで拡散

ロシアで起きた巨大地震の影響で、遠く離れた日本でも広い範囲で津波警報や注意報が発表された。そんな中、ネット上ではある動画や情報が広がっている。

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7月31日のテーマは、「津波のフェイク動画やデマ情報が拡散。ソレってどうなの?」だ。

岩手・久慈港で1m30cmの高さを観測するなど、列島各地に津波が押し寄せた。この影響でJR東海道線などが運転を見合わせ、仙台空港は閉鎖となった。街ゆく皆さんに影響を受けたか聞いた。

街の人:
私の兄が横須賀に住んでいるが、職場から家に帰る電車が全部止まってて、家に帰れなくなり上司に車で送ってもらったが、いつもより1〜2時間遅く家に帰ってきた。

街の人:
ジムに行っているが、インストラクターが電車が止まって来られなくてクラスが受けられなかった。

そんな中、津波を巡りSNS上では、真偽不明の情報やフェイクとみられる動画が拡散されている。

「カムチャツカ地域の一部で4mの津波が観測されました」というコメントとともに投稿された映像では、数十mはあるように見える巨大な波がヤシの木の並ぶビーチに押し寄せている。

さらに、高層ビルを飲み込むほどの高さの波が街を襲う映像もあった。国立情報学研究所の越前功教授に見てもらった。

国立情報学研究所・越前功教授:
生成AI製だと思います。下の方に赤い人が2人いますよね、これが1人になる。物理的におかしい。これだけの障害物があるのに波が減衰していないとか、時間軸でアラがある。

これらは、全て生成AIで作られたとみられる「偽動画」だという。

次にくる地震を予知するかのような投稿
次にくる地震を予知するかのような投稿

他にも、50万回以上閲覧されている投稿には、主に関東地方を赤い枠で囲み「震度3~4に注意してください」と次にくる地震を予知するかのようなものもあった。

気象庁は、「地震を予知することは不可能」だと注意を呼び掛けている。

さらに越前功教授は、偽動画や偽情報は生成AIで作られたものだけではないと指摘する。

大きな津波がビーチを襲い、人々が悲鳴を上げながら逃げている。これは「カムチャツカの地震でハワイでも津波到達」という文章とともに津波の映像が投稿されている。越前功教授の分析を聞いた。

国立情報学研究所・越前功教授:
これはリアルなものでは。(しかし)他の過去の災害の映像を使い回している。

映像は、過去に発生した別の津波の映像で、今回の津波の映像だと誤解させるものだという。このように、過去の映像を使い回し注目を集めようとする「偽動画」は他にもあった。

「イルカや鯨の浜への打ち上げと、地震や津波は明白に関係がありそう」と書かれた投稿では、実は全く同じ映像が2年前に投稿されていた。座礁したイルカを漁師が助けている映像を、この投稿では、今回の地震や津波と結びつけている。

こうした投稿、一般の方にはどう見えるのだろうか。

街の人:
本物と言われれば本物にも見えるし、今どきのAI生成と言われたらそう見える。自分が目で本当に見たものではないから、本当かどうか見極めにくい。

街の人:
(これは)フェイク。こんなひどくはない。いくら何でも。こっちならフェイクじゃなくて、本物かなという感じがする。ネットだけしか見ない人がいる。でもそれだけを信じるのはちょっと怖い。

「公式情報に基づいて冷静に行動を」と専門家は指摘

青井実キャスター:
柳澤さん、この偽動画情報をどう思いますか?

SPキャスター柳澤秀夫さん:
この投稿の場を提供しているプラットフォーム側も、協力して投稿者を特定して、二度とこういうことができないようにするとか、あるいは法的措置も検討するぐらいの段階にも来ているんじゃないかなと思います。放置しちゃいけませんよね。

では、こうした偽動画に騙されないために、私たちが注意することはなんだろうか。越前教授に聞いた。

国立情報学研究所・越前功教授:
映像自体を見極めるのは難しい。特に災害時だと混乱している中で、「本物の映像」と認識してしまう可能性もある。一番手っ取り早いのはソーシャルメディアを見て情報を得ることだが、投稿する側も閲覧数を稼ぐために、必ずしも真実でない情報を流す傾向もある。鵜呑みにしないのが一番。政府機関・自治体・報道機関が発表する情報に基づいて行動・判断することが大事。

災害が起きた時には、不安な心につけ込むような偽の情報が溢れる傾向にある。複数の情報を見比べて、可能な限り冷静に判断することが大切だ。
(「イット!」7月31日放送より)

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