熊本市の新庁舎整備をめぐり、熊本市は本庁舎と議会棟を同じ中央区の『NTT桜町の敷地』に、現在本庁舎内にある中央区役所を『花畑町別館跡地』に、それぞれ移転建て替えとする計画。こうした市役所庁舎の建て替えによって生まれる跡地周辺などのまちづくりを考えるシンポジウムが7月19日に開かれた。

高島福岡市長「規制緩和がトリガー」

熊本市が開催したシンポジウムには市内外からおよそ450人が参加した。

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参加した男性は「市役所とかサクラマチとかを、どう連携して活性化できるのかなという視点で参加した」と話し、大学生の男性は「ちょうど跡地利用の研究をすることになっていて、その勉強も兼ねて今回来た」と話した。

ディスカッションでは、パネリストの一人、福岡市の高島宗一郎市長が市中心部の再開発『天神ビッグバン』の経緯について、「建て替えが進んでいない、耐震強度が低い建物が多かった、これが福岡の課題1」と話す。

また、高島福岡市長は「一つのフロアの中に広い面積のビルが福岡には少なく、『ペンシル型』のビルが多いという課題があった。ニーズが増えているにもかかわらず、なぜ建て替えが起きないのか。航空法の高さ規制があって、これ以上高いのが建てられない。それを打破したのが『国家戦略特区』。アベノミクス第3の矢・成長戦略で国家戦略特区が出てきたとき、福岡市として航空法の高さ規制の緩和を提案し、これを勝ち取った。福岡の天神ビッグバンは、この航空法の高さ規制を緩和したことをトリガー(きっかけ)とし、一気にこれまでのニーズが爆発して実際の建て替えにつながっていった」と、『天神ビックバン』の成功のカギについて語った。

大西熊本市長「熊本地震がきっかけ」

続いて熊本市の大西一史市長は「2016年の熊本地震がまちづくりを進めるきっかけになった」と述べた。

大西熊本市長は「〈災害が起こることを前提に街をつくらなきゃだめだ〉と明確に思った。市役所の移転建て替えもそうだが、最新の技術で拠点をつくって、どんな地震が来ても市民の生活をしっかり守れるような体制をつくって、行政の対応が継続できるようにすることが一番重要なポイント」と話す。

大西熊本市長「100年に一度の好機」

そして話は、市街地の再開発をめぐる公有地の活用へと展開。高島福岡市長は「福岡市は市役所庁舎を建て替えたわけではないが、(天神)エリアの中にあった大名小学校が統廃合になった。このエリアが空いた」と話した。

高島福岡市長は、当時市内になかった超一流ホテルの招致を考えていたが、地元住民の要望は全く違うものだったと言い、「地域の人は公民館とか『老人憩いの家』が欲しい。一方で、五つ星のホテルも欲しい。跡地に対する希望が統一性なくあった。これをうまくできたのがデザインの力だった」と述べた。

大名小学校跡地に2023年に完成した『福岡大名ガーデンシティ』は、ホテル『ザ・リッツ・カールトン福岡』のほか、公民館、老人憩いの家、店舗などを広場と組み合わせデザインされた大規模施設となった。

大西熊本市長は「公有地が空く場面、活用する場面はそう出てはこない。そう考えると(今の熊本市は)100年に1度の好機だと思っている。皆さんの要望をたくさん出してもらうこと。人口も減っていく中で、どうやって街の機能を豊かに良くしていくのか。これからの50年、100年に向けてどうしていくのか。いいポイントに立っているので、最大の未来への贈り物をつくっていくためにも皆さんとともに頑張っていきたい」と述べた。

2025年度に基本計画を策定へ

参加者した女性は「福岡はあか抜けてるなと思った」と話し、同じく参加した大学院生は「福岡の事例がすごく分かりやすくて、自分も土木・まちづくりを学んでいるが、〈まちづくりって、こういうふうに進んでいるんだな〉というのを直接話を聞けたので、とても面白かった」と話した。

熊本市は今後も市民参加のイベントなどで、新たなまちづくりの機運を高めたいとしている。終了後、大西熊本市長は「できるだけ多くの意見を反映させるまちづくりをしなければいけない」と語りった。

庁舎建て替えをめぐり熊本市は2025年度に基本計画を策定する予定。

(テレビ熊本)

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