子どもにとって「家族」とは…。そう考えさせる事件が全国で相次いでいる。そして、また、広島でも…。被告として法廷立ったのは3歳の男の子の母親と祖父。2人は男の子が騒いだといって、粘着テープで体の自由を奪い、食事も満足に与えず、男の子は、一時、心肺停止状態に陥ったことも。裁判所は、母親と祖父に実刑判決を下した。

事件の概要
3歳の長男に対する保護責任者遺棄致傷などの罪で起訴されたのは、広島市南区の無職・熊谷瞳被告(27)と、瞳被告の父親で3歳の長男の祖父・和弘被告(52)。
初公判が開かれた2025年4月18日。法廷に姿をあらわした瞳被告は髪の毛を派手な色に染め、和弘被告は肩にかかる程の長い髪にマスク姿だった。
起訴状によると、2人は2024年9月に共謀して、当時3歳だった瞳被告の長男の両腕や両足首を粘着テープで巻き付け、約5時間半にわたり拘束した罪(逮捕罪)に問われる。
この日、瞳被告と和弘被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。長男が家の壁やドアをたたいたり、夜、かんしゃくを起こすのに困って、身体の自由を奪うようになったというのが理由だった。

複雑な家庭環境
瞳被告は、大学在学中に妊娠して中退。当時の夫と共に長崎県で暮らしていたが、夫が心を病むようになり、同年5月ごろ、父親の和弘被告が住む広島の実家に戻る。瞳被告には子どもが3人。今回の事件で被害者となった長男は末っ子だ。
やがてその長男が、家の壁やドアをたたいたり、夜に大声で泣くようになり、瞳被告と和弘被告は対応に苦慮するようになったという。
その年の8月ごろには、和弘被告は長男が騒いだとして、長男の両手首や口を粘着テープで塞ぐよう、瞳被告に指示。その後も、長男が大声で騒ぐなどした際には、粘着テープで手足を縛って身体の自由を奪い、その様子を撮影して2人で共有していたという。
事件が発覚したのは今年(2025年)1月。2人が長男を病院に連れて行った際、子どもの様子を不審に思った病院関係者が児童相談所に相談したのがきっかけだった。
長男は低栄養状態で脳は委縮し、痩せ細っていたという。
