長男の体重は8か月で14㎏→6.3㎏に
今年5月7日、2人は、「保護責任者遺棄致傷」の疑いで再逮捕され追起訴。裁判が始まったのは今年6月20日だった。
法廷に現れた和弘被告は、前回の裁判とは異なり頭を丸めて出廷。裁判では、実の母親と祖父による「虐待行為」が明らかになる。
起訴状によると2人は、去年10月上旬ごろから今年1月ごろまでの間、やせ細った長男に十分な食事を与えず、医療機関を受診させることもなく、心肺停止の状態にさせ、低酸素脳症の傷害を負わせた罪に問われた。
2人はこの事案についても起訴内容も認めた。
裁判で、検察官は瞳被告と和弘被告が、かんしゃくを起こす長男に「しつけ」として食事を与えなかったことや、去年5月の時点で約14キロあった長男の体重が、今年1月時点で半分以下の6.3キロにまで減っていたことを明らかにした。

「病院に行ったら 虐待を疑われると思い悩んだ」
被告人質問では犯行の様子や動機が明らかになった。
【弁護人】
「なぜ病院に連れて行かなかったのか」
【和弘被告】
「その時は罪を犯しているという認識があり、虐待を疑われるのが怖かった」
【弁護人】
「犯行は意図的にやったのか?」
【和弘被告】
「それは無かったが、長男がどうしても夜中に動き回ることがあったので、みんながケガをしてはいけないと思っていた」
【検察】
「長男が痩せてきたという実感はなかったのか?」
【和弘被告】
「あった。考えたこともある」
【検察】
「食事をもっと与えれば良かったのではないか?」
【和弘被告】
「当時はしつけだと思い込んでいた。そのままではダメだと思っていたが、瞳被告と元夫の離婚手続きなどもあり、後回しにもなっていた。生活を安定させることが一番だと思っていた」
和弘被告は時折、涙を流しながら、そう述べた。
一方、瞳被告は被告人質問で、「母親としての葛藤があった」などと主張した。
【弁護人】
「長男にごはんをあげることはなかったのか?」
【瞳被告】
「父がいない時にはお菓子をあげたり、自分の分のご飯をあげたりしていた。しかし和弘被告に『甘やかすからよくない』と言われ、以降あげなくなった」
【弁護人】
「テープで縛ることを正直にどう思っていた?」
【瞳被告】
「正しいことだとは思わなかった。他の子の面倒も見なければいけなかったので、
動けないようにしたが、あまりきつくは縛っていない」
【弁護人】
「病院になぜ行かなかった?」
【瞳被告】
「病院に行ったら、虐待を疑われると思い悩んだ」
【弁護人】
「いま、子どもたちのことをどう思っている?」
【瞳被告】
「自分勝手だがさみしい。毎日会いたいと思っている。1番上の子は長男に食事を与えていないこと、遊びに連れて行かなかったこと、全部覚えていると思う。3人には申し訳ない」
保護された後、長男は約2カ月にわたって入院。低酸素脳症の傷害を負い、脳が萎縮するなどの症状があったものの、現在はリハビリをしながら懸命に生きているという。
それを聞いた2人の被告は、何度も「申し訳ない」と謝罪の言葉を口にした。

今年6月20日の裁判で検察は、2人に懲役5年を求刑。「約4カ月にもわたり、毎日のように食事を抜き続け、餓死寸前にまで追い込む一方で、長男以外の子には食事を与えるなどしており、長男に対する差別的な扱いは、残酷な仕打ちで極めて悪質」などと理由を述べた。

一方、弁護側は「罪と真摯に向き合い、拘留中も親としてできることに取り組んでいる」などとして、和弘被告に執行猶予付きの判決を求め、瞳被告に保護観察付きの執行猶予判決を求めた。
最後に2人はそれぞれこう述べた。
【和弘被告】
「本当に私の間違った考えで、娘の家族を壊してしまって本当に申し訳ない」
【瞳被告】
「間違えたことをしたと反省しているし、子どもたちにまた母親と認めてもらえるようにしていきたい」