子供たちの健康を支える毎日の給食。しかし、学校給食の現場にも物価高の波が押し寄せている。
今回、大分県内18市町村すべてにアンケートを取り、食材の高騰などどんな影響が出ているのかを調査。子供たちに「健やかに成長してほしい」という思いで奮闘する給食の現場取材した。

シチューの食材「ブロッコリーからパセリに」背景に価格高騰
子供たちが毎日楽しみにしている給食。
大分市の大在東小学校の2日のメニューはコッペパンと蒸しトウモロコシ、トマトシチューだった。
「おいしい」「ジャガイモとかお肉とかいろいろ入っていておいしい」と喜ぶ児童たち。
メインのトマトシチューに使われていたのは『パセリ』。しかし、これまではパセリではなく『ブロッコリー』だったそうだ。
大在東小学校栄養教諭・阿南早都己さんは「ブロッコリーだと(690食分で)4千円から5千円、もっとかかるかもしれない。パセリは使用量が少なくて済むのでおそらく1000円以下くらい。パセリを使った方が金額を抑えられるのでパセリに変えた」と食材を変更した理由を述べた。
学校給食の現場がいま直面しているのが食材の価格高騰だ。

大分県内18市町村のうち15市町村で「1食あたりの費用が値上がりした」
TOSでは給食への影響について18市町村にアンケートを実施。
2022年度から2025年度の給食について聞いたところ、物価高の影響で1食あたりの費用が値上がりしたと答えた自治体は大分市や日田市、佐伯市、宇佐市など15市町村だった。
この15市町村では2022年度と2025年度を比べると1食あたり20円から90円ほど値上がりしていた。
1か月に換算すると400円から1800円ほど値上がりしている。
大分市の小学校では1食あたりの給食の予算が3年前の265円から67円アップ、1か月だと1340円の値上がりに。これに伴い大分市では保護者が支払う給食費も値上がりしている。

「肉じゃがは牛肉ではなく、ニラ入りの豚じゃがに」栄養価を考え工夫
子供たちにとって大切な給食。
限られた予算内で栄養価の高い食事を提供するため、ほかにもメニューに工夫を凝らしていた。
大在東小学校栄養教諭の阿南さんによると「肉じゃがというと牛肉を使うが、牛肉は単価が高いのでニラ入りの豚じゃがで献立を立てる。そうすると牛肉を使う時に比べて半分くらいの金額で抑えることができる」という。
また、鶏もも肉をムネ肉に変更。単価を抑えながら栄養バランスを維持できるように工夫している。
阿南さんは「おいしく楽しく食べてさらに健康な体づくりをしてもらいたいと思っている」と話す。

玖珠町では地元産の米を比較的安く仕入れるなどして価格を抑えている
一方、食材が高騰していても1食あたりにかける費用を変えていない自治体も。玖珠町の小学校では1食あたり240円の予算がかかっているが国の交付金や町の予算の一部を充てることでメニューを変えずこれまで通りの給食を提供している。
しかし、最近は食材の高騰が続いてることから、地元の玖珠米を業者から比較的安い価格で仕入れるなどして地産地消を意識しながら価格を抑えているという。
◆学校給食センター菅田都さん
「保護者の皆さんに負担してもらう額は変わっていない。児童生徒が元気に活動し健やかに成長してもらうために必要な栄養をとれることを前提にしている。皆さんに喜んでもらえるように限られた予算を工夫して献立を考えている」

竹田市では加工品を手作りに変えコストダウン
また、出荷量が多い旬な食材を使うことで費用を抑えるとともに、子どもたちの食育にも繋げているという。
他の自治体でも様々な工夫をしている。
竹田市の給食では、オムレツはこれまで加工品でしたが今は給食センターで1日1230食をすべて手作りしている。
またゼリーなどのデザートも既製品の提供をやめて、いまは桃ゼリーなど手作りしている。
竹田市は「手作りをすることでデザートは1食あたりおよそ20円のコストダウンができている」と話している。
給食センターの人たちの苦労、そして少しでも子供たちにおいしい給食を届けたいという思いが感じられる。

宇佐市ではひき肉の代わりに大豆ミートを使用
ほかにも宇佐市では「ドレッシングを手作り」「ひき肉の代わりに大豆ミートを使う」国東市では「麻婆豆腐では『素』を使用せず、一から作る」「安く仕入れることができる旬の野菜の比率を増やす」など工夫していた。
育ち盛りの子供を支える学校給食。手作りしてもらうのはありがたいと思う反面、負担が増えていないかと心配になる部分も。
物価高を工夫だけで乗り切るのは限界があり、全国の子供たちが安心して給食を食べられる施策が必要である。
