お金をかけず社会を学べる
大人が介入して習い事などの予定を入れることで放課後から余白の時間をなくさずとも、子どもの学びの時間は週末、保護者が一緒にいる間にも作ることができます。
机に座って、教材を開いて、さあ勉強しましょう!という態勢を整えなくても、例えば、子どもと一緒に散歩や買い物にいったとき、ちょっとした問いを投げかけるだけで、いつものご近所が学びの場に変わります。
まだ、長男が小学2年生だった頃、2人で銭湯に出かけたことがあります。鯉が泳ぐ水槽がある、父子のお気に入りの場所でした。お風呂上がりに好きな飲み物を買って外へ出ると、隣接するコインランドリーが目に入ります。
銭湯に出かけて…父子の会話
そこで、私から「なんでコインランドリーはお風呂屋さんの隣にあるのかわかる?」と質問。
「脱いだらすぐ洗える!」
「するどい! もう一つヒントを出すから、考えてみて。コインランドリーに来るお客さんとお風呂屋さんに来るお客さんは同じタイプの人だからなんだけど…どんな人かな?」
「広いお風呂が好き」
「おお、それも正解だ」
「他には……あ!わかった。お家にお風呂がない」
「またまた正解。プラスして、コインランドリーに行くということは?」
「洗濯機もないんだ。なんで?お風呂がない家に住むんだろう?」
「それはね、家賃がぜんぜん違うんだよ。初めて一人で暮らすとして、お風呂がある家よりない家の家賃が半分だったらどうする?」
「うーん、安いほうがいい!」
「家賃が安いということはあまり広くない家が多いし、洗濯機を置くスペースもない場合も多いんだ。それにお風呂屋さんに来て、お風呂に入っている間に洗濯が終わっていたら便利でしょう」
「だね!」
このやりとりは元リクルート勤務で、初めての民間企業出身の区立中学校校長になった藤原和博さんが、杉並区立和田中学で行っていた「よのなか科」からヒントを得たもの。
当時、和田中学の授業を見学に行き、ふだん親子で近所を散策するときにできることを考え、実践していた事例です。
こんなふうに散歩や買い物の途中に子どもに質問して、本人に考えてもらい、遊びの延長線上でいろんな正解に気づいてもらう。
大人側がそんなことを心がけて過ごしていると、日常の中に社会や経済の仕組みを学ぶためのヒントがたくさん転がっています。

島根太郎
株式会社東急キッズベースキャンプ代表取締役社長。一般社団法人キッズコーチ協会代表理事。2006年キッズベースキャンプを創業。民間学童保育のパイオニアとして業界を牽引。2008年12月には東急グループ入りし、東急グループの子育て支援事業の中核企業としての展開を開始。一般社団法人民間学童保育協会、東京都学童保育協会で理事を務める。保育士資格保有。