20年前に起きた強盗殺人事件「神戸質店事件」で、無期懲役の判決が確定している緒方秀彦受刑者(66)について、再審=裁判のやり直しを求め、弁護団が申し立てた。
この事件では1審の神戸地裁で無罪となったものの、2審の大阪高裁で無期懲役の判決が言い渡され、上告の棄却を経て確定していた。
裁判のカギとなったのは、「目撃者の証言」だったが、弁護団は「1年10カ月前の目撃証言が信用できない」と再審を請求した。

この弁護団の考えについて、菊地幸夫弁護士は「正しいアプローチ」だと評価した。
菊地幸夫弁護士:弁護側のアプローチは正しい方向にあると思います。目撃者の方がおっしゃる、見たのが一瞬のこと、暗い午後8時半ぐらいですか。『目しか覚えていない』、『似顔絵の自信はない』。こういった目撃状況で、約2年経った後、正確に写真から識別できるという方が、私も難しいと思います。それは常識的な判断だと思いますね。ですからそこを徹底的についてくっていうこのアプローチは正しいと思います。
そして再審の実現を期待した。
菊地幸夫弁護士:無期懲役というのは、人によっては10年すれば出てこられるという人もいますけども、無期懲役の方の平均在監期間というのが30年以上なんですね。相当長期間、まだまだこれからの在監期間が続きますんでね、早くこれ解決に至ればいいなと思います。

■「開かずの扉」その理由とは
取材してきた菊谷記者は、再審制度が「開かずの扉」と呼ばれる理由を解説した。
司法キャップ 菊谷雅美記者:まず再審請求をするまでに、新証拠というものが必要になります。今回も弁護団は事件当時の緒方受刑者のアリバイであるとか、真犯人につながるような手がかりを新証拠にしたかった。ですけれども、これなかなか見つかりません。
司法キャップ 菊谷雅美記者:そういった証拠というのは、捜査機関の手元にあり見ることができないからなんですね。緒方受刑者の場合、冤罪救済を支援する団体IPJ=『イノセンス・プロジェクト・ジャパン』の支援があり、ようやく14年近く経って再審請求にこぎつけました。

■再審請求しても開始までには長時間 その背景には
しかし、請求できたといっても、再審が始まるまでには長い道のりが待っている。
菊谷記者は再審までの時間がかかる要因として、3つの課題を挙げた。
1.「裁判官の裁量次第で証拠が開示されたり開示されなかったりする」
司法キャップ 菊谷雅美記者:今回の弁護団も新たな証拠の開示を求めていますが、これが認められるかどうかは『裁判官のさじ加減次第』です。
2.「再審開始の決定が出たとしても、検察官が不服申し立てをすれば、また振り出しに戻ってしまう」
司法キャップ 菊谷雅美記者:袴田事件のように一度開始決定が出ても、検察官の不服申し立てが続くと、実際に開始するまで、何十年もかかってしまうことがあります。
3.「再審開始をいつまでに判断するのか、再審制度に関する法律の規定がない」
そして菊谷記者は「できる限り早く法改正を行う必要がある」と指摘した。

■法改正 機運は高まっているが…法務省は踏み切れるか 議員立法も党派間で足並みそろわず
こうした指摘に対し菊地弁護士は、袴田事件などの冤罪事件の影響で、法改正の実現が期待できると述べた。
菊地幸夫弁護士:刑事訴訟法っていう法律がこの場合適用されるんですけどもこ、最後の方に再審について書いてあります。簡単で条文が少ないんですね。これがずっと今まで来ているんです。いろんな規定が不足してるんですね。
袴田事件の再審が非常にいい結果で終わったように、今再審の規程を変える機運が高まっていまので、ここチャンスだと思います。
冤罪は「最大の人権侵害」とも言われる中で、再審制度のあり方そのものが問われています。
(関西テレビ司法キャップ 菊谷雅美)
関西テレビ「newsランナー」2025年6月26日放送
