春から夏にかけて花を咲かせるタンポポ。近年見かけるのは外来種が多く、日本固有の種である『日本タンポポ』は年々減少しているという。その希少な在来種を育て、様々な商品づくりに意欲を燃やしている男性が秋田・大仙市にいる。男性が目指すのは“日本タンポポの里”づくりだ。
10年で2万本に 希少な在来種を栽培
大仙市協和峰吉川地区。
5月中旬、自然豊かな地域の一画を黄色く彩っていたのはタンポポの花だ。

このタンポポは自生しているのではなく栽培されているもの。2025年は4月の冷え込みで例年より2週間以上遅れたものの、美しく花を咲かせた。

栽培しているのは、よしかタンポポプランニングの今野孝一さん。峰吉川地区をタンポポで盛り上げようと、10年ほど前から栽培に取り組んでいる。
今野さんが育てるタンポポ、実は私たちがよく目にするタンポポとは少し違う。いわゆる『日本タンポポ』と呼ばれる日本固有の在来種だ。
一方、私たちが道端などでよく見かけるのは、ほとんどが海外から入ってきた『西洋タンポポ』。どちらのタンポポかは、花の下にある「総苞片(そうほうへん)」と呼ばれる部分に注目すると簡単に見分けられる。

総苞片が上を向いて花にくっついているのが『日本タンポポ』。下に反り返っているのが『西洋タンポポ』だ。
在来種の日本タンポポは年々減少しているという。今野さんによると、峰吉川地区で自生するタンポポの5000本に1本くらいの割合で、日本タンポポが育つ環境がどんどん奪われているのが一番の原因だという。
今野さんは、緑にあふれ空気もきれいな峰吉川地区を“日本タンポポの里”にしようと、地域で見つけた1本の日本タンポポの種から少しずつ花を増やしてきた。

地域の人たちと協力して雑草を刈るなど、日本タンポポが成長しやすい環境を整え、今では3つの畑で合わせて約2万本を栽培している。
日本タンポポで多彩な加工品開発
今野さんが大事に育てたタンポポは、見て楽しむだけでなく、味わうこともできる。
今野さんが開発したのは『タンポポコーヒー』。製造の様子を見せてもらった。

まずは、乾燥させた日本タンポポの根を細かく砕いて粉にする。この段階で良い香りが漂ってくる。今野さんいわく「タンポポの下にアリが巣を作る。そのくらい甘みがある」という。

粉にしたものをフライパンで焙煎。大量生産はできないが、全て手作業で行うのが今野さんのこだわりだ。
熱してダマになってきたら機械で細かくして再び焙煎。納得いくまで作業を繰り返したらタンポポコーヒーの完成だ。
今野さん自慢のタンポポコーヒーは、香ばしい香りと優しい苦みが特徴。

今野さんは「この優しさ、マイルドさが日本タンポポの特徴。せっかく手間暇かけて育てたタンポポを、完璧な形で飲んでもらいたいという思いで作っている。タンポポコーヒーでは日本で一番だと思ってやっている」と胸を張る。

アイデアマンの今野さんは、コーヒーにとどまらず、キャンディーやパウンドケーキなど日本タンポポを使った商品を10種類ほど生み出してきた。
日本タンポポの輪を広げたい!
2025年、今野さんはまた新しい商品を完成させた。

タンポポコーヒーのビールとサイダーだ。タンポポコーヒーサイダーは、まるでコーラのような甘さながら、後味はしっかりコーヒーのマイルドな苦みが感じられる。
評判は上々とのことで、「サイダーでありコーヒーであるというものができたので、自分なりに満足している」と話す今野さん。自慢の一品が増えたようだ。

意欲がとどまるところを知らない今野さんは「日本タンポポの輪を、県外含めて広げていきたい」と語る。「秋田のどこへ行っても西洋タンポポに負けないくらい日本タンポポがある、そんな状態ができたらいい」それが今野さんの目標だ。
『日本タンポポ』を当たり前に目にする環境を目指して、今野さんの活動は続く。
(秋田テレビ)