平成以降最大規模となった岩手県大船渡市の山林火災。市の面積の約1割・3370haが焼失した未曾有の災害に、全国15都道県から消防隊員が集結し延べ3万人以上が消火活動に当たった。「消防人生でこれほど焦ったことはない」と語り、東日本大震災とは異なる「時間的猶予のない」緊迫感の中、リアス海岸特有の複雑な地形と格闘しながら、現場で指揮を執った仙台市消防局の隊員たちに当時の状況を聞いた。
経験超える炎の勢い
2025年2月26日、岩手県大船渡市で発生した山林火災は、市の面積の約1割に当たる3370haを焼き尽くした。その規模は平成以降最大となった。

今回の火災では全国15都道県の消防が参加する緊急消防援助隊が結成され、懸命な活動が展開された。
その消防の活動全体の指揮を担ったのは仙台市消防局だった。
現場の部隊を指揮していた梅村大輔さんと最前線で消火活動にあたった平井雄太さんの2人は、3月1日から4日間大船渡市に入った。

梅村さんは「入った場所が赤崎町の合足というエリアだった」と語る。
大規模に広がった山林火災、その消火を困難にさせていたものの一つがリアス海岸特有の複雑な地形だったという。

平井さんは「消防の装備を持った状態での急斜面での消火というのは、かなり体力を要したというところで、すごく困難な現場だったと感じている。不規則な地形というのもあって風があちこちから吹いている。火の勢いはものすごく強かった」と当時を振り返る。

梅村さんも「20mのスギの木が一気に目の前で炎に包まれるような、ナイアガラの(滝状の)花火のような、熱風がボワーッとすごい。経験値よりもはるかに速いスピードで広がっていくことに、かなり戸惑った」と、その異常な状況を説明する。
命の危険感じた瞬間
山間部で消火栓などの設備が少ないため、海から2kmにわたってホースをつなぎ消火にあたった。しかし、放水の圧力が弱まり、火の勢いに対抗できず危険な場面もあった。

梅村大輔さん:
潤沢な水が先端の消火隊の方に持っていけなかった。(消火隊が)火に巻き込まれるではないが、そういう危険性があるような状況になった。指揮隊として消防人生の中であれだけ焦ったのはあまり記憶にない。
平井雄太さん:
一時的に我々に向かってくるような炎があって、正直私自身はパニックになった部分があった。
東日本大震災との違い
2人は14年前の東日本大震災でも仙台市沿岸部での救助活動に当たっている。
今回の山林火災は津波災害とは異なる切迫感があったという。

平井雄太さん:
東日本大震災の瞬間的、瞬発的な災害に比べて、今回は進行性の火災というところが大きく違くて、消火活動しない限り消えないので、時間的猶予がない点で大きく違った。建物1棟燃えるような大きな火があちこちで出ている火災は初めてだった。がく然としたし、防げなかった建物もあったというのは本当に悔しい思いはあります。

過去に経験のない過酷な消火活動。
しかし、地元の住民の姿がその支えになっていたと平井さんは言う。
平井雄太さん:
(移動中消防車の)この席に座っている時、窓越しで見たところ、歩道上におばあさんがいてずっと深々と頭を下げていまして、その姿を見て我々も頑張らなくちゃと思った。うるっときたというか、被災した方たちなのに我々のことまで考えてくれて本当に感動した。

延べ3万人以上が動員された消火活動。
雪や雨が降ったこともあり発生から12日目にようやく鎮圧に至ったが、226棟の建物に被害が及んだ。

出火原因は現在も調査中だが、梅村さんは今回の教訓を踏まえ「山林火災というのは野焼きとかたばこの投げ捨て、そういった人的な要因で発生するのが大半。気象状況、風が強いとかそういうことを考慮して火気の使用を各自判断してほしい」と、改めて火の取り扱いに注意を呼びかけた。
(岩手めんこいテレビ)