今年に入り、卵が再び値上がりしている。高知県内のスーパーでもMサイズ10個入りが330円前後。お弁当や毎日の食卓に欠かせないだけに辛いところだ。

そんな中、「小玉サイズ」なる卵が10個200円台で販売されていた。普段よく見るMやLより小ぶりだが、試しに購入してみた。実は以前、「卵はサイズにかかわらず、黄身の大きさは変わらない」と聞いたことがある。だから小玉サイズでも、中身はMやLと同じではないかと期待したのだ。

サイズが違っても黄身の大きさは一緒なのか?
サイズが違っても黄身の大きさは一緒なのか?
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しかし…割ってびっくり。ウズラの卵かと見まがうほど小さい黄身は、お弁当の卵焼きを作るのに3つ使っても足りないほど。現実は甘くなかった。黄身の大きさが同じというのは単なる噂だったのか?

卵を研究して46年。京都女子大学名誉教授で“卵博士”として知られる、株式会社エヌ・ビー・エル『鶏と卵の研究所』の八田一所長に話を聞いた。

 卵のサイズと黄身の意外な関係

【株式会社エヌ・ビー・エル「卵と鶏の研究所」 八田一所長】
市販されている卵は、通常、M~LLサイズで、これは鶏が一番多く産む大きさです。鶏は、生まれて150日目ぐらいから卵を産み始めます。最初は非常に小さな卵から始まり、180日ごろから安定してMSやMサイズを産むようになります。そして徐々に大きくなり、1年目ぐらいからLやLLサイズの卵になります。

卵を研究して46年、『卵博士』こと八田一所長
卵を研究して46年、『卵博士』こと八田一所長

M~LLサイズの黄身の大きさは、だいたい18~20グラムでほとんど変わりません。卵全体では、Mサイズが58グラム~、LLサイズで70グラム~と10グラム以上違いますが、これらは卵白の量が増えるのであって、黄身の大きさはそれほど変わらないのです。

鶏の年齢(飼育日数)とともに少しずつ黄身が大きくなる傾向があり、個体差もありますが、極端に大きさが変わることはないと思われます。

小玉卵が市場に? 鳥インフルが影響か

生後150日ごろからの産み始めの卵は小さく、SサイズやSSサイズに分類されます。

Mサイズ以上ではほとんど変わらない黄身の大きさですが、Sサイズ以下は小さくなります。Sサイズで約13グラム、SSサイズは10~13グラム程です。

*卵のサイズと卵黄の目安(出典:兵庫県立農林水産技術総合センター)
・SS(約40~46g)は黄身が約10g
・S(約46~52g)は黄身が約13g
・M(約52~58g)は黄身が約18g
・L(約58~64g)は黄身が約19g
・LL(約64〜70g)は黄身が約21g

本来、Sサイズ以下は加工用(ゆで卵など)に使われ、市場に出回りません。

しかし、今年1月に鳥インフルエンザが集中的に発生し、約540万羽が殺処分されました。これは、2023年に卵が急騰した、いわゆる“エッグショック”の時を上回る数字です。(2023年1月の殺処分数は463万羽)

新しく生まれた鶏が、安定して卵を産み始めるには半年かかりますから、今は市場全体で卵が不足しています。その結果、本来出回らないSサイズ以下のものが「小玉サイズ」として店頭に並んでいるのではないでしょうか。SサイズやSSサイズの黄身は10~13グラムで、18~20グラムあるMサイズの5~7割程度ですから、小さく感じたのではないでしょうか。

料理に合わせて卵のサイズを選ぼう

MサイズとLLサイズでは、Mサイズの方が黄身の比率が高くなります。

例えば、卵焼きやゆで卵など、味の濃さや色を重視する場合はMサイズが向いていて、メレンゲを使うお菓子作りや茶わん蒸しなどには卵白の多いLLサイズが適していると言えるでしょう。

実は、卵の値段の大半は餌代です。産卵鶏の餌はトウモロコシ。100%輸入ですから、円安の影響で飼料代は3倍ほどにあがっています。

価格が高止まりしている卵
価格が高止まりしている卵

さらに、この数年は毎年のように鳥インフルエンザが猛威をふるっており、残念ながら、卵の価格は高止まりしている状況です。

しかし卵は『完全栄養食』と呼ばれるほど栄養バランスがよく、かつ、数多くの料理に使える万能食材です。大きさごとの特徴を理解し、上手に料理に取り入れてほしいと思います。

卵をぬらすのは絶対NG 食中毒に注意を!

これからの季節は食中毒に注意が必要です。

卵の殻の表面には大量のバクテリアがついています。バクテリアは自分では動きませんが、卵の表面がぬれると、水を漂って、表面にある無数の穴(気孔)から中まで入りこんで卵を腐らせてしまいます。

卵は決してぬらしてはいけません。腐るだけでなく、冷蔵庫の中で菌をまき散らかすかもしれないのです。必ず乾燥した状態を保つようにして下さい。

また、卵を素手で触ったら、必ず手をきれいに洗ってから他の食品の調理に取り掛かってください。食中毒の原因になります。卵は肉や魚と同じ生鮮食品だということを十分に意識して下さい。

SDGsも栄養も“優等生”な卵

卵は飼料効率が良い食べ物です。2キロの餌で1キロの卵が産まれるのです。同じ動物性たんぱく質でいうと、概算ですが、例えば牛肉は10キロの餌で1キロの牛肉、豚肉は5キロの餌で1キロ、鶏肉は2.5キロの餌で1キロです。

また、保存性にも優れています。卵の賞味期限は、「生で食べられる」期限のことで、加熱すればもう少し長く食べられます。目安としては1か月ほどですが、保存状態によりますので、食べる前に臭いや見た目はしっかり確認して下さい。

SDGsの観点からも、栄養学的にも非常に優秀な卵。サイズごとの特性を生かして、さまざまな料理を楽しんでいただければと思います。
(株式会社エヌ・ビー・エル「卵と鶏の研究所」 八田一所長)

取材:高知さんさんテレビ