帰国できていない拉致被害者の親世代でただ1人となった横田めぐみさんの母・早紀江さん(89)。拉致問題の進展がない中、早紀江さんは首相の言葉にある違和感を抱いている。

めぐみさんの同級生が開催『励ます会』

6月中旬、北朝鮮による拉致被害者、横田めぐみさんの母・早紀江さんを『励ます会』が川崎市で開かれた。

横田早紀江さんを励ます会
横田早紀江さんを励ます会
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1977年11月15日、新潟市で中学校からの帰宅途中に拉致されためぐみさん。

励ます会には、めぐみさんの中学校の同級生を中心に、拉致当時から早紀江さんを支え続けてきた真保節子さん(93)など20人ほどが集まった。

早紀江さんは「あの頃の方たちが今もめぐみちゃんを救うために集まって、一生懸命に励ましてくださっていることは本当にありがたい。兄弟のように、家族のように思っている」と目を細めた。

早紀江さんが違和感を抱く“首相の言葉”

めぐみさんの帰りを見届けることなく2020年に亡くなった父・横田滋さんの写真が見守った励ます会では終始穏やかな時間が流れた。

石破首相
石破首相

一方で、その穏やかさとは裏腹に、早紀江さんには最近の首相の発言に抱いている違和感がある。

2025年2月、拉致被害者家族会と面会した石破首相は、「この問題が風化することがあってはならない。時間の経過とともに拉致問題が風化していくのと反比例する形で、私どもは国民に対する啓発運動をやっていかねばならない」と発言。

2025年5月の国民大集会では、「風化は時間とともに進んでいくもの。今日お集いの心ある皆様方、風化を止めるために全国各地で活動していただき、私どもも心新たに取り組んで参らねばなりません」と述べた。

石破首相が折に触れ語る「拉致問題を風化させない」という言葉。これをどう受け止めているのか早紀江さんに問うと、間髪入れずに「それは、本当におかしい話」と返ってきた。

「そんなことを言うのではなく『早く取り返さなくてはいけない』と言ってもらわないといけない。『風化しないように』というものがなければ、拉致問題は話になっていかないという意味にしか取れない。そんなことじゃない」

国家主権が侵害された拉致の重大さを忘れないために、二度とこのような問題が起こらないために、あるいは被害者救出を国民の総意とするために、“風化防止”に言及する首相。

しかし、被害者本人、そして家族にとっての拉致問題の解決は、今すぐにでも帰国が実現し、原状復帰が叶うこと以外にはあり得ない。政府に求めるのは被害者の救出、その一択だ。

「とにかく助け出してあげたい」早紀江さんの心の叫び

早紀江さんは次の誕生日で90歳、めぐみさんは61歳になる。

早紀江さんとめぐみさん
早紀江さんとめぐみさん

「とにかく元気で生活していてくれさえすれば、私達は最後まで頑張れると思う。助け出してあげたい。どうしたら助け出せるだろうということばかり考えている」

拉致問題の風化防止を声高に唱える日本政府は、早紀江さんの心からの叫びに背を向けてはいないだろうか。

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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