「何回か殴られそうになったし『殺す』と言われたことも…」衝撃的な発言をするのは今や福岡のインバウンドスポットの1つとなった南蔵院の住職だ。コロナ禍から一転、多い日には1000人を超える外国人観光客が訪れるというこの場所で一体何が起きているのだろうか。

外国人からは拝観料を徴収
外国人からは拝観料を徴収
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「外国人が9.5割じゃないですか」

福岡県篠栗町にある南蔵院。全長41メートルもの巨大な釈迦涅槃像は国内だけでなく海外からの観光客に大人気だ。

南蔵院(福岡・篠栗町)
南蔵院(福岡・篠栗町)

新型コロナの影響で落ち込んだインバウンドは急回復し、今や1日平均500人、多い日には1000人の外国人観光客が訪れるという。

外国人観光客の姿が目立つ
外国人観光客の姿が目立つ

取材班が訪れたこの日も外国人観光客の姿があちこちに。青森から訪れたという観光客はその様子をみて「外国人が9.5割じゃないですか」と驚きの表情を浮かべる。

国内の観光客は驚きの表情
国内の観光客は驚きの表情

ポイ捨て、つば吐き、酒盛り…迷惑行為の数々

そして外国人観光客の増加とともに目立つようになったのが、迷惑行為の数々だ。「境内にゴミを捨てていく。つばを吐きかける者もいます。ひどい時には、夜に境内で酒盛りを始めるグループまで」。こう話すのは南蔵院の林覚乗住職。「最も危険を感じたのはスケートボードを持ち込んだというのもあったんですが、あろうことか境内で花火を上げ始めたんですよ」。

南蔵院の林覚乗住職
南蔵院の林覚乗住職

ほかにも、何度もトイレを詰まらせたり、記念写真を撮影する際に無造作に寄りかかって灯籠が倒れたりと、物的被害も後を絶たないという。

トイレを詰まらせる被害も(撮影:南蔵院)
トイレを詰まらせる被害も(撮影:南蔵院)

「撮影禁止」の注意書きの前で堂々と…

境内には外国人向けに英語でも「撮影禁止」の注意書きが掲示されている。だが取材班が取材中にも、注意書きの目の前でスマートフォンを取り出し堂々と写真撮影をする外国人の姿がみられた。

撮影禁止にもかかわらず写真撮影する人も
撮影禁止にもかかわらず写真撮影する人も

そして植え込みの中に隠すように捨てられていたのは紙ごみ。ソフトクリームを食べた後にポイ捨てしたのだろうか。そんなごみがほかにもあちこちで見つかる。

ポイ捨てのごみがあちこちに(撮影:南蔵院)
ポイ捨てのごみがあちこちに(撮影:南蔵院)

また、集団で地面に座り込み、他の参拝者の通行を妨げるような光景も。

座り込む外国人観光客も
座り込む外国人観光客も

注意すると…「文句を言うな」「殺す」

一部の外国人観光客による目に余る行為。そこで林住職が注意すると、信じられない言葉が返ってきたという。「『カネを払って来てやっているのに、文句を言うな』と何回も言われたんですよ。注意して殴られそうになったし、『殺す』とも言われたんですよ」。

南蔵院 林覚乗住職
南蔵院 林覚乗住職

こうした度重なる被害と身の危険を感じる状況を受け、南蔵院は5月から「外国人観光客限定の拝観料」を徴収することに踏み切った。18歳以上の外国人観光客に限り1人300円を徴収するという異例の措置だ。徴収した拝観料は寺の警備や清掃の費用に充てるという。

徴収した拝観料は警備や清掃の費用に充てる
徴収した拝観料は警備や清掃の費用に充てる

「外国人だけ拝観料徴収」に当事者は

この措置を当の外国人観光客はどう受け止めているのだろうか。「私たちは旅行客なのでお金を払うのは当たり前です」(アメリカからの観光客)などと理解を示す声が多く聞かれた。

外国人観光客は
外国人観光客は

「本音を言えば、拝観料など誰からもいただきたくはありません。でも本当に必要な時はやらなきゃいけないし」と林住職は複雑な胸中を吐露する。当初は500円という案もあったといい今後、値上げの可能性についてたずねると「そうですね、その時代時代で変わりますからね」と答えた。

外国人向けの注意書き
外国人向けの注意書き

マナー違反は周辺にも

現在、南蔵院は4人の警備員を配置し、さらに専門の清掃業者とも契約を結び、境内の環境維持に努力を続けている。しかし残念ながらマナー違反は南蔵院だけでなく、周辺にも広がっている。南蔵院の最寄駅のホーム脇には、飲料の空き容器や食べ物の包装紙など最近捨てられたとみられるごみが散乱していた。

駅近くの土産物店の人は、こう嘆く。「自動販売機のゴミ箱に分別もせずに捨てる外国人の方が増えましたね。信号がない場所を横断したりもしています」。そして、こう付け加えた。「遠くから足を運んでもらえるのは、本当にありがたいことですが、訪れた国のルールやマナーは守っていただきたいですね」。

近くの土産店の人は
近くの土産店の人は

オーバーツーリズムの課題

インバウンドの急回復は日本経済に大きな恩恵をもたらす一方で、「オーバーツーリズム」という新たな課題を生み出した。観光客の集中が、地域住民の生活環境や守り継がれてきた文化、自然に深刻な悪影響を及ぼす事態は、全国各地でも見受けられるようになっている。

急増する外国人観光客とそれを受け入れる地域社会がいかに共存するのか、その苦悩は深い。

外国人観光客から拝観料を徴収
外国人観光客から拝観料を徴収

(テレビ西日本)

テレビ西日本
テレビ西日本

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